捏造万歳ニツキ要注意。

 【BLEACH 23話 with:Asahi】

 一護と対峙するような形で立つ姿が“ふたつ”。

 目の前には大切な人。

 その後ろには―グランドフィッシャー。



          * * *


  「どんな冷徹な死神も決して斬ることのできぬ相手が一人はいる。
   それは必ずだ。それを捜し出す事でわしはこれまで死神共を退けてきた」
  「さあ〜あ、どうかしらねぇ。あんたの黴の生えた経験なんてアテになんかなんないわぁ〜」
  「!?」
  「人様んちの超やさしいおにーサマ捕まえてなにしてんのよ」

 一護とグランドフィッシャーの間にが割って入る。
 ひょうきんな口調とは裏腹にの目にはグランドフィッシャーに対する侮蔑の色があった。

  「ぅうわ、最低にして最高に美しくない2ショットだこと」
  「・・・・?」
  「タッチ交替よ、一護。ルキア、一護をよろしく」

 はそれだけ言うと一護の手から斬魄刀を拝借し、自分の着ていたパーカーを一護に頭から無造作にかぶせた。
 ちょっとやそっとでは取れないようにしてから。

  「コーンー!!ちゃんと一護みててね〜。あとは任せたわよー?」
  「合点!の姐さん!!」
  「コン!てめ、コノヤ・・・ごわっ、前がみえねぇ!!オイコラ!?手ェ出すな!!」
  「無理むり。さっきからだいぶブッチブチきてんのあたし」
  「これは俺の戦いだ!!」
  「奇遇ね、あたしもよ」
  「っだよそれ!!」
  「・・・大事なお母さん殺されて
   大事なお父さんの神聖な日を汚されて
   大事な夏梨を恐がらせて
   大事な遊子を泣かせて
   大事な一護を傷つけられて
   黙ってられるような性格してないの・・・あたしだってくやしいのよ」
  「!」
  「・・・・ゴメン、あとでいくらでも殴っていいから」

 はそれ以上話をしようとはしなかった。


  ―ザッ

  「さぁて、今度はあたしのお相手願いましょうか。悶絶グロキモルックスの虚さん?」
  「気丈だな、小娘。それがどこまでもつかが見ものだ」
  「へ〜」

 はあくまで態度を崩さない。

  「残念ながら弱音をはく気はさらさらないわよ。と・く・に、アンタの前でなら尚更」

 が刀を構える。切っ先を真っすぐに擬似餌にむけて。

  「ほう・・・・おまえは小僧とは違ってこの姿には大して思い入れが無いようだな」
  「ブー、はずれ。残念でした・・・・・思い入れがあったってアンタの前では言うもんか。
   あたしの美しき日々はあんたごときに揺るがないわよ」
  「そうかな?」
  「

 優しい声がを呼ぶ。記憶と違わぬ声。

  (騙されるな)

  「だめよ・・・刀を引いて!」
  「・・・・・」

 は、何も言わない。

  (惑わされるな)

  “
  −“

  (ためらうな)

  「“”」

  (流されるな)

  「お願い・・・・母さんを斬らないで・・・!」

  (・・・懐かしい)

  「・・・母さん?」

 グランドフィッシャーの顔が勝利を確信して歪む。微動だにしないに爪が迫る。


  ―ドン

  「・・・・・どこが?」
  「・・・・・あ・・・・・?」

 爪がを貫くより速く、斬魄刀がためらいのない軌跡を描いて
 擬似餌とグランドフィッシャーをまとめて貫いた。

  「イイコト教えてあげようか?」

 刀を突き刺したままがグランドフィッシャーに囁く。

  「あたし達のお母さんは、」

 ギリギリと刃が食い込む。

  「可憐で」

 の顔から表情が消える。

  「清楚で」

 ビリビリと空気を震わすほどの殺気が漂う。

  「お前みたいなできの悪いハリボテとは比ぶるべくもなく美人なんだよ、こ、の不細工!!

 大音声と共には一気に刀を薙いだ。



          * * *


  「・・・・・」

 ザァ・・・と雨の音だけが響く。
 はほんの少しの間骸と化した擬似餌を見つめていたが、唐突にそれを肩に担いだ。

  「?どうしたのだ」
  「・・・こんなナリでもお母さんに似たヤツが転がってるのは気分が悪いから埋めてくる。コン、一護放してあげて」
  「うぃっす」
  「ありがとね」
  「オイ待てよ、
  「すぐ戻ってくるから」

 は一護の制止も聞かずに森に入っていった。



          * * *


 適当に穴を掘っては母親のかたちをした“それ”を埋めた。

  『“”』
  『“だめよ!・・・刀を引いて!”』
  『“”』
  『“お願い・・・・母さんを斬らないで・・・!”』


  「・・・・・」

 ギリリ、とのどこかが軋む。手が震える。体が強張る。立っているのも億劫で思わず座り込んだ。


  −お母さんなワケがないのに

  −そう豪語したのに

  −自分で斬ったくせに


  「格好悪・・・」

 こんなの馬鹿げてる。
 辛くて
 悲しくて
 苦しくて
 恐くてたまらないだなんて。

  「ッごめん・・・お母、さん」


  ―ガサッ

  「ッ!?」
  「ぉぁあ??なんだこんなトコに居たのか」

 一護とを捜しにきたのだろうか、傘をさした一心が立っていた。

  「あ〜あ〜、びしょぬれで。なにしてんのよ、父さんが笛吹いたら帰ってこいっていっただろ〜?」
  「・・・・お父さん?」
  「おぅ!父さんだ・・・・ってなんだぁ、元気ねぇな。一護と喧嘩でもしたのかぁ?」
  「・・・・・」
  「えっ!?ウソ図星!?待て、大丈夫だ!泣くなよ父さんがついてるぞ!
   一護のヤロウ、かわいいを泣かせやがって!!見つけたら母さんの墓の前で三点倒立させてやる!!
  「お、お父さん、落ち着いて!!違う、喧嘩なんかしてないよ。けど・・」
  「ん?」
  「なんか、もう何が何だか・・・・・」
  「?」

 お父さんの焦った声が聞こえる。
 心配をかけたくないだとか、そんな事を気にしていられる余裕なんて無かった。

  「っ、・・・うぁあああああん!!」


 お母さんを思っているからこそ擬似餌を斬れたのか
 お母さんをないがしろにしたから擬似餌を斬ったのか

 自分のしたことは 
 誇れることだろうか、軽薄なことだろうか

 お母さんの尊厳を
 守れたのだろうか、冒涜したのだろうか

 正しかったのか、間違っていたのか

 今の自分には解らない。
 答えのでない事ばかりがのなかで渦巻いて、

 心配をかけたくないだとか、そんな事を気にしていられる余裕なんて無かった。


  「っ、どうしたらよかったのか、もうわかんないよ」

 ただ声をあげて、泣き喚くことしかできない。


  「

 一心がに手をのばした。

  「お前がそこまで泣くのも珍しいもんだ。今までは何があっても泣かなかったのに」
  「っ・・ごめんなさい」
  「怒ってるんじゃねえよ。そうやってずっと我慢してきてたんだろ?は頑張り屋さんのお姉ちゃんだからな!!」

 幼い頃のように、一心はの頭をなでる。

  「何があったかは解んねえけど、父さんも母さんものした事がよくなかったなんて一回も思ったこと無い!
  いっつも家族のこと一番に考えてて・・・優しい子だ」
  「お父 さん」
  「父さんも真咲も一護も遊子も夏梨もみんなが大好きだぞ」
  「・・・・ッお母さんも、」
  「あったりめぇよ!だからそんなふうに泣かなくていいんだよ。な?それに・・・・あんまりが泣いてると父さんも泣いちゃう!!
  「なんでテメェまで泣く必要がある、このヒゲ親父」

  ―ドカッ!

 景気のいい音と共に一心がのけぞった。は急な出来事に付いていけずに目を丸くする。

  「ぐぁっ!一護、テメェ後ろからケリ入れるとは卑怯者!!
   お前には秋葉原を一瞬にして虜にすらできそうなぐらいかわいい“萌え〜”な泣き顔なんざ見してやらねぇぞ!!
  「黙れ、変態!娘をアキバ系の対象にするな!っていうかどっからその知識仕入れてきやがった!?」
  「テレビチャン〇オンだ!!」
  「テメェ、またよりによってそんな選手権見やがって・・・・」
  「っていうか二人揃ったんなら戻るぞ!!遊子も夏梨ずっと待ってるんだからな!」
  「チッ、わかったよ」
  「ほれ、行くぞ!も」
  「うん・・お父さん」
  「?」
  「大好き」


 娘の発言に一心が固まる。

 と、次の瞬間

  「キャー!!」
  「グハッ」
  「!?」

 謎の悲鳴をあげた一心が一護に飛び蹴りを食らわせた。

  「オイコラ聞いたか一護!!あぁ?なんだ聞いてなかったのか、聞けよ!!!
  「・・・何が言いてぇのかさっぱりわかんねぇし、わかりたくもねぇよコノヤロウ!!
  「馬鹿野郎!かわいい娘に“パパ大好き”って言われたんだぞ!!!これが喜ばずにいられるか!」
  「微妙に捏造してんじゃねぇ!!年甲斐なくはしゃぐなヒゲ!!いいからさっさと遊子たちンとこ行けよ!俺はに話があるんだ!」

 さっきの仕返しだと言わんばかりに一護が一心を蹴り飛ばした。
 だが、浮かれきった一心にはたいして効いていないように見える。

  「っとにあの毎日がカーニバル親父が・・・」
  「だ、大丈夫?一護」
  「何ともねぇよ。こそ、怪我とかしなかったのか」
  「してないよ、平気」
  「ならいいけどよ・・・・情けねぇよな、俺は。仇討ち損ねて、」
  「そんな事ない!あたしが横槍入れた。一護が情けない事なんてない!」

 ムキになって言うと一護がの頭をなでた。
 
 まるで、一心のように。

  「・・・・ごめん、
  「一護・・・」
  「言われるまで気付かなかった。でも、そうだよな、俺だけじゃねぇ。だってくやしかったよな」
  「・・・・うん」
  「だから、ごめん。、母さんの敵討ちしてくれてありがとな」
  「あたしも、勝手してごめん」
  「オゥ・・・行くか、ヒゲが騒ぎだす前に
  「・・・前から思ってたんだけど一護も夏梨もお父さんのことヒゲって呼ぶよね」
  「あんな自分の妻の死んだ年も覚えられないヤツはヒゲで十分だ」
  「まさか、お父さんに限って・・・そんなこと」
  「今ちょっと考えただろ、

 いつものようにと一護は歩く。

 時おり、立ち止まりもするけれど。

 すぐに二人で笑いあって。


++あとがき+++++

 3/21付けの日記で書いていたブリーチ夢です。
 あんまり深いこと考えず、しかもおぼろげな記憶で書いたので話がワヤなことになってます。
 一護の見せ場をすごいことにしてしまいました。
 うっかり読んでしまった皆様に深くお詫び申し上げます(土下座)

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