捏造万歳ニツキ要注意。

 【月のかげ】

 影のような男だ。

 静かで、自らを隠しているような
 目を凝らしても実体が掴めないような
 どこまでも人を捕らえて放さないような―まさに、まさに影だ。
 影は、今は自分の手にある一護の斬魄刀。

 根拠はない。でも判る。
 なんで自分に彼の姿が見えるのかは、判らない。
 けれど
 今はそんなこと気にしてる場合じゃないのは、判る。

 折れてしまった刀の柄をはしっかりと握りなおした。


  「初めまして斬魄刀さん。あたしの、声は届いてる?」

  “あぁ・・・・聞こえるとも、黒崎。奇怪なことだな。
   私の使い手は黒崎一護、本来ならお前には私の声すら聞こえない筈。
   だのに、お前は私を幾度か振るうことすらしたな・・・・そして一護より先に私を見つけた”

  「・・・・嫌だった?がっかりした?うんざりした?」

  “いや?頼もしいぞ。片割れ殿”

  「そっか・・・・そっか、ならよかった。安心したよ」


 刀の柄に額を寄せて、は祈るように言葉を寄せた。


  「ねぇ斬魄刀さん。お願い」

  “なにを、望む?”

  「力を貸して」


 こちらを見据える影が揺らぐ。
 けれどはとつとつと続けた。


  「ごめんね。ホントなら一護に使われるのが本望なんだろうけど
   でも、あたし、一護もルキアも石田も助けたいの・・・でも
   このままじゃ、何もできない。だから―お願い、手を貸して」


 がそう言えば影はにべもなく言い放つ。


  “ただの人間が死神に向かったところでその差は歴然。結果は火を見るより明らかではないのか?”

  「退きたくない」

  “お前に適う相手ではない”

  「だったら何なの」

  “死にに行くようなものだ、と言っている”


 その言葉はもっともだ。勝算など無に等しい。


 ただ、もうの心はひとつなのだ。


  「馬鹿言わないで。理屈じゃないの、こういうのは。
   それにね一護と遊子と夏梨の結婚式にでるまではあたし死んでも死なないんだから」


 明らかにおどけた言葉をしかし真面目に答えるを見て


  “・・・・気に入った”


 影が、笑う。

 掌のなかにある刀身が真っすぐ天(そら)に伸びた。

 かりそめの刄は、薄く蒼い。
 折れそうに華奢な刀身はけれどこの掌によく馴染んだ。


  “いいか。退くな。進め。守れ。
   なれば私は力を貸す。我が仮初めのひたむきな主よ”

  「感謝します。貴方の広い心と、深い思慮に」


 もう一度は斬魄刀を構え直す。
 
 切っ先は二人の男に、背中は斬魄刀の化身に向けて。


  「何なんだあの女っ・・・・生身のまんまで斬魄刀使ってやがる」
  「・・・・解せんな」
  「オレが行きます」
  「油断するなよ」


 二人の死神は恐ろしく場慣れしている。
 勝つ見込みは恐ろしく低い。
 けれど、は誓約(うけい)を交した。

 背には寄り添う影がいる。

 背中を押してくれる言葉がある―“臆するな”と。


  「そうね。さぁ、気合い入れていきましょうか」


 たとえ諸刃のつるぎでも。
 絶対に退かない。
 決して逃げない。

 だってこの掌は、まだ何もしていないのだから。


++あとがき+++++

久々の気まぐれ部屋更新。初の黒背景。
またアビスさまから漫画を貸していただいてるからいろいろしたくなりました(なんて単純な奴だ)
何で斬月夢かと聞かれたら返答に困る管理人です(オイ)
まあ、アレですよ。菱の趣味をよく把握している玲花さまならわかるんじゃないかと
夢主は前回の旭に似て非なるものです。デフォルト名を何にするかで結構悩んだりしたりして。
本文中に何回か同じ言葉を使ってますが、これは一応わざとなんです。ミスでなくて。
相変らず本編を限りなく歪めています。そしてこの後主人公は勝ったのか負けたのか・・・
他にもまだ書きたいのがあるんですが、そっちをはじめるとかなり長くなってしまいそう(汗)

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