【かわいい】
困ったように、弱ったように、眉をハの字にして苦笑い。
いつもより少し強張ったその笑い方に、本庄は首を傾げた。
「どうかしたか?」
―いえ、ちょっと
そう言って笑うのは目に見えて明らかだったが、敢えて本庄は問いかける。
予想と寸分違わず返された言葉に、思わず微笑んだ。
「はいつもそれだなあ」
「?」
口癖、と言っての頭を撫でる。
近い目線が気持ちよさそうに眇められているのを見てまた笑みを深くした。
夕暮れ時とは言えど、通りはまだ賑やかに色づいている。
普段の足がほとんど車の本庄にしてみればそんな中をと並んで歩くのは新鮮だった。
女の子のわりに、どころか本庄でも微かに危機感を覚えるほど(なんてったって彼女はまだ成長期だ)
すらりとした背丈のは少し猫背気味で、それでも充分上背のある姿はよく目立つ。
贔屓目(と欲目と色眼鏡のトリプルコンボ)を差し引いても端正な顔の造りをしているを
誇らしく思う反面、やはり独占欲というものも少なからずあるもので。
繋いだ手を平然を装ってポケットにしまい込むと、人混みから庇うついでに体を引き寄せた。
その際、微かに甘い香りがふわりとたつ。
何の気なしにそう告げれば、途端にはおろおろと落ち着きをなくした。
まるでいたずらを見咎められた子供のようで微笑ましいなどと
本庄が和んでいる間にも、はどんどん顔色を変えていく。
とうとう、観念したようにが指定カバンから取り出したのは小ぶりのラッピングバックで、
差し出されたそれを受け取って中を覗けば綺麗に彩られたプレゼントボックス
「俺に?」
「はい、その・・・調理実習で・・・なんですが、鷹に味見してもらったら“甘い”ってばっさり」
どんどんどんどん声にハリがなくなって
まるでオーディオのボリュームでも落とすように音は小さくなっていく。
どうやら、本庄の我が子の一言が相当心を抉ったようだ。
べこん、と音がしそうなぐらいへこたれてしまっている。
「鷹の野郎、未来の母さんに何て事を・・・俺育て方間違ったかな」
「!?み、未来のって・・・え、ぇえ!?」
「将来的に前向きに。嫌か?」
「め、滅相もない!」
「なら宜しい。お口の悪い息子は俺が叱っておくから安心してくれ、お母さん」
「ぃ、いえ、その・・・私も甘いものが好きでなくて・・・あまり、味に、自信がないというか・・・」
そう言えば、はいつも紅茶はストレートで、コーヒーをブラックで飲んでいた。
思い起こしてみれば、先程顔をしかめたのも身にまとった香りの所為だったのではないだろうか。
「甘いものは、名実ともに、似合わなくて・・・」
もにょもにょと歯切れ悪く言葉がなりを潜める。
目はうろうろと泳いで明後日の方へ。
しょんぼりとしてしまったを見て、不謹慎ながら頬が緩むのを堪えきれなかった。
―だって、それは、つまり
「かわいいよ」
「へ・・・?」
俯いてしまった顔を上げさせて、キスをひとつ。
真っ赤に熟れた頬に自らのそれを引き合わせればの方がほんのり熱い。
「背が高いの気にして猫背だったり、甘いもの嫌いなの気付かれないように隠したりして
必死に頑張ってるが女の子らしくてすごくかわいい。ありがとう、大事に食うよ」
「ほん、じょう さん」
はアメフトやっていて、背が高くて甘いものが苦手な自分は
女の子らしくないとコンプレックスを抱いてしまっていたようだけれども。
少しでもそれを解消しようと頑張っている、今本庄の腕の中に居るより、かわいらしいものがあるだろうか。
今だって、自分の一言でこんなにも潤んだ瞳で感激して。
本庄のために一喜一憂してくれる君が、が、
「ああ、もうお前本当にかわいい。俺あと三年も我慢できるかな・・・」
何より一番かわいくて仕方ない。
そんな幸せな帰り道。
17 かわいい。
++あとがき+++
あ、甘――――――い!!!!
自分で書いといて言うのもなんだが鬼甘ぇえ――――――!!!!!!←細川 一休 が 降りてきた!
てか、道 端 で 何 し て ん だ お ま い ら !! (爆笑)
こっそりお嫁発言とかすみません。「お母さん」って言わせたかった。趣味ですすみません。(ひぃい!)
本庄さんはオープンな人であれ。
包容力No.1だと思ってる。なんてったって子持ちだから(アイタタタタ)
夢主が20歳になるまでは結婚は見送つもりだけど
もう高校卒業したらでもいいかなとかフライング気味な本庄氏。そんな妄想←
この夢設定は本庄さんが男手ひとつで鷹を育てたことになってます。
そして、鷹は夢主と父親の関係をすんなり受け入れてる模様子。
むしろお父さんが夢主にメロメロ過ぎてウザもとい鬱陶しいから
さっさとではなく早く結婚なり入籍なりして欲しいと思ってたらウケる(え)
普通に考えたら色々犯罪ですが、許して下さいだって夢だもの!←殴
お菓子の味に自信がない夢主。だが手先が不器用な訳ではないのでラッピングはプロ級に完璧にしてあるという裏話(笑)
なんかもう結局おっさんに走ってすみません。
マルコと本庄の話数が並んでしまった・・・
もっと若いの(マルコとか高見とか)書かねば・・・
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