トロフィーを持った、誇らしげと言うよりかは純粋な喜びの笑顔。
アメフトボールを象ったオブジェには色とりどりのリボンが巻かれ、木の台座にはトロフィーと同じ金色のプレートがはめ込まれていた。
自宅のリビングだろうかソファーに1人で座ってとびきりの表情を見せる少女の面影は、今も変わらず、そのトロフィーの金色にも負けず、輝いている。

、落ちたぞ?」

ひらり、の開いた手帳から抜け落ちた写真を拾い上げて、そう言う傍ら思わず笑みのこぼれるような、そんな笑顔を写真の中のはしていた。
本庄の知らない、まだ小さい頃の
もうアメフトを始めていたと言うことは、小学校には上がっていたのだろうか。

「え、あれ、何時の間に?ありがとうございます」

鷹と二人で月刊アメフトを読んでいたが写真を受け取る。
同じように顔を上げた鷹が、あぁ、と声を上げた。

「これ、昔の母さん?」

本庄からへ、から鷹へと移っていった写真をまじまじと見ながら目を細める。
くすぐったそうに笑うが、こくりと頷いた。

「うん。小学校の…二年生ぐらいだったかな?親戚の叔父さんが撮ってくれた写真」
「…笑った目元、今もおんなじだ」

そう静かに笑ってまた写真に視線を落とした鷹が、はたと目を見張る。
じっ、としばらく写真の後ろのほうを見つめてから(本庄やが辛うじてわかるほど微かに)悪戯っぽく微笑んだ。

「この写真、ずっと持ち歩いてるだろ」
「え、あ、ぅ…えっと、その、」
?」

鷹の指摘にしどろもどろのが俯く。
じわ、と赤い色が頬に乗った。
くつり、写真とを見比べて鷹が笑う。

「父さん、この写真」
「た、鷹!待っ、だめ!言わないで!」
「……っく、顔真っ赤」
「〜っもう!」

本庄のほうに振り向いた鷹を遮るようにが慌てふためいた。
額をつき合わせるようにして、向かい合ったは困り果てたように眉を下げる。
そんなに構いもせず、鷹は静かに震える携帯を取り出した。

「…大和だ」

携帯のディスプレイを見て立ち上がると、に写真を返して椅子を直す。
リビングを出る手前、もう一つの椅子に座る本庄とすれ違いざまに、鷹は右手を口元に添えた。
内緒話をする子供のように、囁く。二言、三言。

「――――……」
「た、鷹〜!」
「早く出ないと後でうるさいから」
「い、言わないでって言ったのにっ……」

勢い良く立ち上がったの反動で、椅子が揺れる。
がたん、やけに大きく響いた音の後に静寂。
トン、トン、鷹が二階に上がる足音だけが微かに聞こえた。
恥ずかしそうにしゃがみ込むの手元をまたひらりと離れた写真が、宙に乗って本庄の元へ。
そっ、と拾い上げた写真をもう一度よく眺めた。
今度はでなく、その後ろを。

「――……あぁ」

本庄の声に、ぴくり、が恐る恐る顔を上げた。
その頬や額は、最早余すことなく染まっている。

「俺だ」

そう言って本庄は、ふ、と微笑みをこぼした。
ソファーに腰掛けるの横、雑誌か何かの付録だったろうか、壁に貼られたポスターには本庄勝と書いてあるのが読める。
丁度微笑むの隣あたり、まるで一緒に映っているように本庄の笑顔がそこにはあった。

「なんて言うか、その…昔 あんまり野球とか見てなくて、だから、えっと、こ…この頃の本庄さんのこと って、知らないなぁ、とか、思って それで…偶然、この写真が、見つかって」

椅子の後ろに隠れるように、やけに小さく身体を縮こめたがぽつりぽつりと呟く。
声が段々と小さく小さくなっていき、最後のほうは耳を澄ませてもなお小さく、ころりと囁かれるようだった。

「〜つい……その、―うれしくて」

そこまで言うと、うぅと唸るように顔を抱えた膝に埋める。
恥ずかしそうに囁かれたその言葉のひとつひとつで、暖かなものが本庄の胸の内に灯されていくような気がした。
静かに写真をテーブルに置く。
うずくまるの隣に片膝を付いて、そっとその髪をすくい上げた。

「―

そうやってを呼ぶ傍ら、じわりと愛おしい気持ちが滲み出す。
顔を上げる恥じらいや躊躇いが、ここまで伝わって来て、本庄の心はまた暖かなものになった。
染み渡る気持ちに、深く目を閉じる。それでも浮かぶのは、また、の姿だ。
出来うる限り優しく、つとめて穏やかに、蕾に触れるように細心の注意を払って、本庄はに触れる。やさしく、やさしく。
頭を撫でて、髪に唇を這わせる程に本庄は満ち足りた気持ちになった。

そぅっとが顔を上げる。
相変わらず赤くなったままの頬に手を添えて、本庄は静かにキスを落とした。

「ふぁ、…ま、さ」


啄むように口づける傍ら、本庄は幸せな溜め息を吐く。
唇から頬へ、輪郭をなぞって辿り着いた耳朶に優しく囁いた。

「これからも、家族で写真撮ろうな。何回でも」
「鶫ちゃんも一緒に?」
「ああ、鶫と鷹とと俺、それと」

する、うずくまる手足を解かせて、招き入れるように本庄はを腕の中へくるみ込む。
本庄の手がウエストのくびれあたりを優しく撫でた。

「―も一緒に」

大きな掌が覆う先、まだほんの小さな、けれどひとりの家族を慈しむように本庄が微笑む。
ひだまりのように温かな腕に包まれて、も微睡むように穏やかな気持ちで笑顔を見せた。



06 の証



(『―それで、どうだい?の調子は』
 「ん…あぁ、今三ヶ月。嬉しそうだよ」
 『ははっ。鷹、君もだろう?』
 「…まぁね」)


++あとがき+++
いつかやるとは思ってたんですよね…妊娠ネタ
いや、【世界を止めるくらいの威力】を書いたあたりからそんな気が(爆)
【CERAMIC】初のプロポーズネタに続き、妊娠ネタ。次は何だ
途中までは至って普通の写真ネタ(夢主とポスター本庄さんのツーショット)だったんですがリコ・夢主・本庄さんのトリオ夢を→鷹・夢主・本庄さんの家族夢に変えたあたりから菱の何かが弾けました→何時の間にか砂はきそうなほど甘いファミリー夢に
ちなみに『鶫(つぐみ)ちゃん』とは鷹姉のことです。
原作に多分出なさそうなので菱が勝手に名前を付けました。
オリジナル姉ちゃんとして出せたらいいな…と思ってます。
しかし最後だけ読んだら鷹がパパみたi…ゴフッ(喀血)
きっとこれまだ夢主19歳ぐらいだろうなーとか思いながら書きました。幸せ家族計画(笑)
夢主に『まさ』と呼ばせたかった私です。
結婚後も普段は『本庄さん』呼びが抜けなくて、でも偶に『まさ』呼びになるとかそんな裏設定にめためた萌える。ごめんなさい趣味
あーもう…超すき本庄さん。


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