どこか、違うな。そう気付いたのは会って数秒。
雰囲気で心の機微が分かるぐらい、普段から見てきた自負はあると言いたいしその自信もあるが、それ以上には分かり易い。非常に。
俯いてはそんな自分を叱咤するように背筋を伸ばそうとする。
忙しなく短いスパンで行われているその姿は死ぬほどかわいいのだが(叶うことなら何時間だって見ていたいぐらい)、それをほんの少し追い越す形で好奇心が勝つ。(本当に少しの微々たる差)
、名前を呼んで顔を覗き込むと、伏し目がちな瞳の睫毛がふるりと揺れた。
(何度でも思うし求められればが照れ死にするぐらい言葉にできるが、返す返すこの子は本当に可愛らしい)
そ、本庄の上着の裾に、のほそりとした指が遠慮がちに触れる。
何かを決心するように上げられた視線がゆるり本庄を見つめる。
また少し背が伸びたな、心の片隅で本庄はそう考えた。
しかしの背がいくら高いとは言え、それでもまだ余裕のある身長の高低も合まみあって見上げる形になったがすい、と背伸びをする。
「―……‥」
の動向に、呆然と目を見張る。本庄は、動けない。
まるで呼吸以外の全てを忘れさってしまったような本庄を見ての顔が段々青ざめていく。
しまった、そう思った頃には既に遅く、は試合中の俊敏さを彷彿させる恐ろしいほどの疾さで身を翻そうとする。
「す、ぁ えっと…し、失礼しまし、っ!」
「!ちょっと待った」
「ご、ごめんなさい!これは、その・・・ちょっといろいろ事情が、あぁ、ええと・・・すすすすすすすすみませんでしたぁああ」
踏み出した体躯を後ろから縫い取るように抱え込む。
の本能的能力を、本庄の本気の身体能力がからがらの所で上回った瞬間だ。
本庄に捕まえられたはびくりと肩を震わせた。
「、落ち着け」
「本当にごめんなさいもうしません反省してますゆるして下さいっ」
「こら、…!」
ひぁあ、と何とも言えない悲鳴を上げてがまくし立てる。(ああもう何してもかわいいなちくしょう好きだ!)
本庄に背を向ける形でわたわたと身を捩るの肩を掴み直してぐるりと薄い体を反転させる。
こつ、額を突き合わせるようにして、顔を両掌でホールドをかけた。
「怒ってねぇから…聞け、ちゃんと」
「ぅ、あ・・・あの、えっと」
じわ、涙が眦に浮かんで頬が赤く染まる。(何てことだ!)
瞬きひとつでぽろぽろと零れ出してしまった涙に本庄はひどく動揺した。
本当に、何てことだ。が何の躊躇いもなく事に及ぶ訳がないというのに俺は。
まるで鶫や鷹を小さな頃そうしてあやしたように、本庄はを抱き締めて背中を叩く。
「……」
「ご、ごめんなさいぃ〜…」
「、大丈夫だ。泣かなくて良い。俺は怒ってねぇから。ごめんな、びっくりしたな」
ぐずぐずになってしまったの背中や肩をひたすら撫でさする。
時計の長針がきっかり90度動いた頃までかかって、本庄はようやく全ての経緯をから聞き出すことに成功した。
細かい経緯を全て端折って端的に言うのならば『入れ知恵』だ。
「なるほど、それで…何というか、あれだ…うん」
なるだけ直接的な表現を避けて、本庄の言葉は迂回を繰り返す。(心ない迂闊な一言はまたをパニックに陥れかねないからだ)
くすん、の落とした溜め息が本庄の首をくすぐる。
ごめんなさい本庄さん、小さな声がまたそう呟いた。(だからホントにこの子はああもう…っ)
腹の底まで深呼吸を一つ。自分の心を落ち着けるように。
そうして、本庄はもう一度の頬に手を這わす。
「、俺は怒ってなんかないよ。逆だ」
「逆…?」
「ああ、嬉しかった。ありがとう。いい子だ、」
「――……‥本庄さん」
ほう、安心し尽くした瞳で、眼差しで、がようやく微笑みを見せた。
しゅるり、指通りのいい髪に指を絡ませて本庄は心の底から安堵する。
赤みのまだ引かない目元につい、と唇で触れた。
瞼が下りる。誘われるままに、ひたり、瞼にキス。
憧憬のくちづけだと言われるがそんな余裕はあまりない。
「だいすき、です、本庄さん」
こしょこしょと囁かれた言葉の持ち主は、いつだって本庄の何もかもをこうして攫って首ったけにしていくのだ。
きりりと震える心臓の辺りを宥めながら、本庄はまたキスを落とす。
20 泣きはらした目で笑う君
(死ぬほど好きな君が好き)
++あとがき+++
返す返す思いますが本庄氏の理性は鋼鉄(爆)
最近の【CERAMIC】的本庄氏の傾向として@愛情がハンパないAすこしヤンデレ気味B嫁好きすぎだろうお前といった感じです(ですじゃねぇ)(ですじゃねぇよ)
なんだか似たような話ばかりでげふごふん○| ̄|_
本庄氏の理性は鋼て(ry
夢主が何をしたか、何を入れ知恵されたかはまた後日改めて書こうと思ってます。それも楽しみ。
バカップル以上入籍未満な時期の本庄夫妻を書くのが好きです。愛情のから騒ぎ^ ^(笑)
王城夢主が本気逃走を図ると手に負えなくなるので本庄さんも必死です。
夢主を必死にあやす本庄氏楽しかった。
100年経っても良い夫婦!
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