※ ジャンプ2号ネタバレ注意(王城夢主の設定です)

すい、と瑞々しい香りが差し出される。
シルバーに刺さった果実を持つのはではなく、もっと骨ばった大きな手指だ。
ひとつの実が8等分にカットされ、ひやりと甘い香りが鼻先をくすぐる。
綺麗に剥かれた林檎はMr.ドンの手すがら口元に運ばれ、軽く唇に押し当てられた。

“Please help yourself to the apple.”

魔法の呪文のようにすらすらとドンが囁く。
召し上がれ、そう促されたはしゃきり、と林檎にかじり付いた。
熟してたくさん蜜の入った実は甘く、程よい酸味もあっておいしい。

「お味はどうだ?」
「おいしい、です」
「そりゃよかった。ヨーイチ・ヒルマから買った惚れ薬入りだ」
「ふはっ!!」

事も無げにさらりと言われた言葉に思わず咽せる。
これがウィットに富んだジョークなのであろうが、蛭魔が関わっていると途端に現実味を帯びるから嫌だ。
結構本気で咳き込むを見て、くつくつと笑うMr.ドンが言った、“冗談だ”

くるりとフォークを反転させて、先程かじったのとは反対の方がまた差し出される。
勧められるままにまた林檎を咀嚼したをMr.ドンは機嫌よく眺めた。(まるで親鳥のような甲斐甲斐しさ)
ダイニングテーブルに向かい合って腰掛ける二人の周りには甘酸っぱい香りが取りまいている。
ようやくひと切れを食べきる前に、ぽた、と雫が一粒、の口元に落ちた。
純度の高い水滴はぺたりと纏わりつくように吸い付いたまま、肌の上に留まっている。
がそれを取り払おうとするより早く、Mr.ドンの右手が蜜を拭った。

「ん、む。Mr.・・」
「じっとしてろ」

雫の形は曲げた人差し指の関節に残したままで、唇をなぞる。
しばらくはその感触を楽しんでいた指が、ぐい、唇と唇の間に割って入った。
驚いた拍子にスペースを増した口内に微塵の遠慮もなく突っ込まれた人差し指が歯列をなぞって好き勝手動く。
身を引こうにも他の四本の指が顎をしっかり掴んで離さない。(たかが指四本で、Mr.ドンはの動きを封じてしまうのだ)
目のやり場に困って目を瞑ると、Mr.ドンの指先に移った林檎の香りがかすかにした。

「ぅ、」

散々暴れ回った長い指がするり、口の中から引き抜かれる。
濡れた人差し指に構いもせず、Mr.ドンはガラスの器にまるまる七切れ残っている
林檎のうちの一つをつまみ上げて、かじった。

次の瞬間、

「!!」

次なる一手を全く予想していなかったの、力の抜けきった四肢が引き寄せられる。
先程までとMr.ドンとの間にあったはずのテーブルと距離は何時の間にか無くなって、代わりにごく近い所にMr.ドンの体温があった。
椅子に掛けたままのに上から覆い被さるような形でMr.ドンはくちづけを落とす。
つう、今度は指先ではなく舌が唇を押し開いた。
しゃらりとした林檎の欠片と一緒に滑り込んだ温かなそれが、意思を持って優しく動く。
Mr.ドンの左手との右手を絡ませて、右腕で抱き寄せて、隙間が空くことを許さない。

「ふ…っ、ミス タ」

今度こそ、雛に餌付けをする親鳥のように、果実を飲み込ませるまでは離れないつもりなのだ。
瞳が心を語っていた。逃がさない。
やっとの思いで林檎を嚥下したが息を吹き返すまでには気の遠くなるような道のりだった。(実際の時間にしたら、ハドルよりも短いのかもしれないけれど)

「刺激が強すぎたか?」

強すぎたとかそういう問題ではなく掛け値無しに衝撃なのだ。
心臓の弱い人ならばきっと今頃ショック死である、まだ喋ることもままならないは沈黙でそう主張する。
Mr.ドンに全てを預けながら瞳を閉じた。彼のくちづけは何時だっていっぺんに体力と精神力を物凄く削り取ってしまう。
疲弊しきったのつむじを微笑んだ吐息がくすぐった。

「なら次はうんと優しくしてやるよ」

言葉に違わずそぅっと、壊れ物でも扱うみたいにドンの手のひらが頬を撫でてゆく。
目を開けた先にあったのはとろけそうに甘く、穏やかな瞳だ。
両の手がの顔を優しく包み込んで、上向ける。
そのまま眠りについてしまいそうなぐらいの穏やかな気持ちでは静かに目を閉じた。


 05 の、

(二度目のキスはまるでおとぎばなしのように優しくささやかで温かなものだった。)


++あとがき+++
はじめてのドン×王城夢主
声を大にして言いたい夢主そのうちきっと喰われる(食料的に)
最初はただ林檎食べてただけのくせに最終的にはこんな事になる奴らですから
夢主みたいなへたれとMr.ドンを一緒にしてたら確実に頭からむしゃむしゃがぶりですよ
ストッパーがいないのでまさにMr.ドンの独裁政治
ブレーキを失った特急のようなもんです
むちゃくちゃ押しの強いドンと日本が誇るへたれのカップル
いや、これはこれで楽しいけど←オイ
「惚れ薬〜」の下りが一番楽しかった
恋人設定のドン×王城夢主はこんな感じで
ただし原作沿い連載では仲悪くなりそうなフラグの2人
というか一方的に夢主が苦手にしてそう
今後どう転ぶかな〜(笑)


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