【そうして広がる世界】
“ライオンくん”と、本庄が可愛がっている選手が居る。
王城高校背番号13
長い髪をたてがみのようにセットして、勇ましくフィールドに立つ姿はなるほど“王城の若獅子”の渾名に相応しい。
女性でありながら一級品の腕を持つ彼女は関東の猛者達にも決して引けを取らないが、
その実性格は極めて温厚で思いやりのある少女だった。
本庄がらみで何度か話しただけでもわかる、
アメフトと仲間に対する熱意を控え目ながら語る姿は確かに純粋で微笑ましい。
しかしだからといって本庄が何かとちょっかいをかける理由にはならないし、
何よりを構っているときのやつはそれなりに鬱陶しい。
試合中の選手にダイレクトに話に行くよりかはマシかもしれないが、
それにしたっていささか行き過ぎた行動を起こす仕事上の相棒に頭を悩ませていた。
例えば、妙な庇護欲
「お、ライオンくん!久しぶり」
「本庄さん、理事長」
「元気にしてたか?」
「はい」
試合会場の廊下で目ざとくを見つけ出した本庄は、なんのためらいもなく彼女を呼び止めた。
人目もはばからず“ライオンくん”と呼ばれた彼女も馴れたもので、礼儀正しく頭を下げる。
セットされた髪を本庄がデカい掌で豪快に撫でる姿は力関係からすれば虎が猫の子をあやすぐらいの光景だ。
一歩間違えばセクハラにもなりかねない上、きちんとスタイリングされた髪も崩れるからやめてやれと
再三言うのだが本庄は全くと言っていいほど聞き入れず、毎回彼女には申し分ない限りである。
そんなことなどどこ吹く風、とばかりに本庄は久方ぶりに会った親類のように再会を喜んでいる。
「にしても相変わらず細っせぇなあ・・・ちゃんと飯食ってんのか?ほら、差し入れ」
「わ、わわ・・・」
ばらばらばら、と形も大きさも色もとりどりの飴やらビスケットやらなんやら、
細々した包みを次から次へとの手のひらに盛っていく。
体格からすれば順当か少し大きいぐらいの、けれど大の大人に比べたらずっと小さな手のひらは
本庄勝の常識を超えた差し入れの量に当たり前だがすぐに飽和を迎えた。
スポーツ選手にそんなけばけばしい色の怪しげな菓子を山ほど差し入れるのは新手の嫌がらせかと思うほどだ。
そしてそんな大量の物をお前は今までどこに隠し持っていた。
というか贈るなら贈るで紙袋のひとつでも用意をしておけ。
明らかに両手の平の許容量を超えて焦っている顔がコイツには見えないのだろうか、
ギリギリのバランスを保っての掌にふんぞり返る菓子の山を見て本庄は満足げに笑った。
「よし!」
「なにが“よし”だ、困ってるだろう」
「いてっ」
「い、いえ、そんな、嬉しいです」
「くん、コイツに気を使わなくていい。肩書きは関西アメフト連盟の理事だが、
今はそんなこと忘れてくれて一向に構わない。好きに罵声を浴びせてくれ」
「おいおい、ひでぇ言われ様だな」
大仰に肩を持ち上げる本庄を後目にポケットから大判のハンカチを取り出して
今にも決壊を起こしそうな手の下に広げて、カラフルな山を少しずつ切り崩すように誘導する。
すべての菓子を移したのを確認すると、なんとか四隅を纏めて包んでから近くで見るとマメや切り傷の目立つ掌に受け取らせた。
「使いなさい」
「で、でも」
「そのままでは持っていけないだろう?別に大した物でもないし、わざわざ返さなくていい」
「いえ、そんな訳には・・・」
「ー!!ショーグンが呼んでるよ!!」
「ぇ、あ、は、はい!高見先輩!!今行きま・・・って、ああ、えと、」
おろおろと東西アメフト連盟理事2人の顔を見比べる少女の頭を二回、
出来るだけ髪型を崩さないようにポンポンと撫でる。
隣の本庄が少し面食らった顔をしていたが今は気付かないふりをしておいた。
「呼ばれてるぞ、ライオンくん。ハンカチはまた今度返せばいいさ、なあ?」
「あぁ、それより早く行った方がいい」
「はい、あの、本庄さん、お菓子ありがとうございます。
理事長、ハンカチお借りします。今度、洗ってお返ししますので」
「先輩――――!!」
背中を押すような言葉に追い討ちをかけられて、が忙しなく頭を下げる。
スポーツ選手らしくしなやかに駈ける背中が廊下を曲がるまで見送ってから、自分たちもまた踵を返した。
そうして広がる優しい世界
(「可愛いよなあ、甘え下手だからつい構いたくなる」
「否定はしないがお前のはちょっと行き過ぎだ」
「困った顔がまた可愛いんじゃねぇか」
「・・・重症だな」)
++あとがき++++
ここでまさかのおっさん来るー!!(殴)
主人公が愛されてるところを書きたかった。ってか本庄さんいいよね←哀しいかな結局おっさんに走る自分が居る よ!
本庄さんだけだと収集が付かなくなりそうだったので、
関東アメフト連盟理事も急遽引っ張ってきた・・・は、いいものの、名前がどこにも載ってなくて焦りました。
本庄さんが出てたからと思って油断してました。無理やり乗り切れてよかった・・・
結局は関東の理事長も主人公を構ってくれるとかそんな要素を盛り込んでみました。
菱は愛され主人公大好きです(笑)
本庄さんは海外のカラフルなお菓子がすごく似合う気がする。
でもって手荷物は似合わない気がする。
手ぶらだけどどこからともなく荷物を出しそうなそんな独断と偏見と妄想から生まれたお話です←ヲイ
どうでもいいが激しく需要の無さそうな夢だなこれ・・・
マイナー上等サイトですので・・・
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