□■蓮山さつきさん宅「620」さまより、夢主巴さんとのコラボレーションなお話です■□
さらさらと折りたたみのブラシを、薄い茶色の、ライオンのたてがみと称される髪に滑らせる。
四方向にぴんぴんとスタイリングされた髪の毛は見た目に反して猫っ毛だ。
毎朝どうやってセットしているのか、いまだに見たことはないけれど、この手の込んだ髪型は遠くアメリカの地に居る知人とも通ずるところがある。アメフトの、あのフルフェイスの、ヘルメットをかぶっても微塵も崩れないのだ。
雨が降る前にはへたりとしなるくせに、多少の小雨に濡れた程度では重力に屈さないところまでよく似ている。
シャワー後に洗面所に籠もるところも、下手にブラシを入れると大惨事を招いてしまうので、こうして誰かの手を借りないと迂闊に髪を梳くこともできないというところも。
そうやってつらつらと考えていると、巴?、ブラッシングされる犬のように大人しくしていたが手鏡越しにこちらを窺った。
部室のベンチに座っていてもそれなりにあるはずの座高は、相変わらずの猫背で発揮されずに、非常に貴重な上目遣い。(極一部、大和と本庄理事のみ例外あり)
頭はそのまま、淡い色の瞳だけをくるりと動かすはやはり、ライオンと言うより犬のようだ。
「ライオンで猫で犬みたい。は忙しいね」
「それは…喜んでもい?」
「どっちでも」
しっぽがあれば確実に下がる仕草で、は眉を八の字に下ろす。
その上、ううん、と唸るものだから余計と可笑しくて巴はまた唇で三日月をかたどった。
ぽそり、仕返しをするように、が呟く。
「大和だって帝王で猫で、巴と居るときは犬みたいですよーだ…」
「…帝王と犬は否定しないけど、猫は?」
「クロネコヤマト」
「こら、想像しちゃったじゃない」
やめてよ、先に言ったのは巴だよ、そんな会話を一往復、言葉はすぐに笑い声に変わった。
さざ波のようにクスクスと、二人で笑う。
噂をすれば影、や花梨と入れ違いにロッカーに入った大和が着替えを済ませて部室に顔を覗かせた。
顔を見合わせた巴とを見比べて大和が首を傾げる。
「どうかしたかい?」
「何でもないの。入ったら?」
素知らぬ顔で言う巴に従って、大和は、の後ろ、巴の隣に並び立った。
座ればいいのに…。そう巴が言う前に、大和がにこりと笑う。ここがいいんだ。
ほら、と微笑むや、気恥ずかしい気分を見ない振りをして巴は指先の方に意識を集中させた。
蛍光灯の加減の所為か、の髪は余計と薄い色に透ける。
ちら、襟足から始めて、最後の仕上げに差し掛かった所でひとすじ、一本の髪が異質な光を反射させた。
同じものを見つけた大和が声を零す。
「あ、」
「?」
「、白髪」
「うそっ!」
ぴくん!それまで曲がっていた背筋が目を覚ます。
今度鏡に映った目にはほんの少しの驚きとそれを遥かに上回るもうひとつ。
それが何かを知っている巴は、抜いてしまわないように一本、根元から毛先まで真っ白になりつつある所をの目の前まで引っ張って見せた。
やっぱり、は嫌がらない。
「抜いちゃう?」
「ううん、いいの。そのままで大丈夫。ありがとう」
巴には分かり切っていた答えも、大和には意外だったようで首を傾げてこちらを見やる恋人に、後で教えてあげるとこっそり呟いた。
そっと元通りに髪を戻して、ブラシを閉じるとベンチに出して置いたポーチを開ける。
「はい、おしまい」
「ありがとう、巴。大和、待たせてごめんね」
「ちっとも構わないよ。それに、は本庄氏の為にも身だしなみは入念にしなくちゃね!」
「一言多いっ!」
「違わないでしょ?」
「巴までっ!?」
「―、帰るよ」
ウインクまで返した大和を援護する形で呟いた巴に、あわあわとの顔が赤くなった所で鷹がドアを開けた。
まだ色々と言い足りないのだろう、口をパクパクとさせるの肩を強引に押しやって大和が笑う。
「頑張るんだよ!」
「なにを!?」
「…何してるの二人して」
「ほら、。鷹が待ってるでしょ?」
飼い主もとい鷹に引っ張られるように歩いていくを見送って巴も鞄を肩に掛けた。
パチリ、部室の電気を消して施錠。
ナイターも消されて、もうすっかり暗くなったグラウンドを横切ると見慣れた一台の車が校門を潜り抜けて行くのが見えた。
ぴたり、足を止めた巴から三歩と離れずに大和が振り返る。
「巴?」
「…ね、白髪があると嬉しいんだって。自分では言わないけど顔にそう書いてある」
―“ううん、いいの。そのままで大丈夫”
今までも何度かあのやりとりを繰り返したけれど、一度たりともは髪を抜いたことはない。
そんなに目立たないから、抜くと増えるって言うから、そんな感じの言葉たちは決しての核心を持ってはいなかった。
そう、が、口に出しては言わないけれど嬉しそうに、大事そうに、色が抜けてしまった髪をそのままにしておく理由はひとつ。
「は本庄さんが大好きだから」
同じが嬉しい、愛おしい。眼差しは、笑顔はそう語っていた。
親子ほど年の離れた二人の、ほんの些細なお揃い。
だからは、そのままにしたがるの。
滑るように車が過ぎ去っていたほうを見やりながら巴は呟いて微笑む。
なるほどね、と大和も笑顔を浮かべて巴の隣に佇んだ。
手の平サイズ愛情表現
(些細なことが、嬉しいの)
++あとがき+++
おっほい初のコラボレーショーン!!
さつきさん宅「620」より巴さんをお借りしました!さつきさん本当にありがとうございます…っ!
夢にまで見たコラボに陸に打ち上げられた魚のようにジタバタしてます(にこ!)
巴さんは何でもお見通しだと良い…なんて菱の願望。
さり気に絡みにいく大和に積極性が足りないような気がしないでもないですが…勉強します…!
夢主に「巴ちゃん」と呼ばせるかどうしようかギリギリまで迷ったあげくもう一本ネタが出来上がってしまった私の妄想力!\(^o^)/
その話もいずれ是非…!今回はまだまだほのぼのですがいずれはギャグな感じにも挑戦したいです^^
以前の素敵イラストには及びませんが…お礼としてさつきさんへ捧ぐ!な、感じで(小声)
大事なかわいこちゃんを本当にありがとうございました!
さつきさんの素敵なサイトはこちらから!

タイトル*ララドールさまより
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