じりじりと、敷き詰められたコンクリートから熱気が立ち上る。
湿度と温度の混ざり合った熱風が一陣、街路樹を揺らしながら駆けていく。
流れる程ではないけれど、じんわり滲んだ額の汗を拭いながら、は小さく溜め息を吐いた。
猛暑の名に相応しく大通りは熱を帯びて、遠くでは蜃気楼が揺れる。

(暑………)

全シーズン通してアメフト漬けの生活を送っても尚こたえる暑さに辟易しながら足を進めていると、ふと半歩先を歩く本庄が足を止めた。
下がりがちになっていた視線を上げると優しい眼差しとかち合う。
おいでおいで、と小さく手招きをするのに誘われて近付くと、ぽふんと頭を撫でられた。
大きな掌は髪型を整えるように二、三回動いて離れる。
右手が離れたそばから今度は左手が、くい、の頭に何かを乗せた。
途端に少し、日差しが和らぐ。
柔らかなベージュのつばがほんの少し視界を狭めた。

「すぐ使いたいからタグだけ切ってもらえるかな」

本庄のそう言う声を帽子越しに捉えるが早いか、スタッフの女性の、失礼しますね、という柔らかな声が聞こえた。
パチン、値段を確認する暇もなく外されたタグに戸惑ったに気付いたのか、そのまま被っておいで、と本庄が笑う。

「暑いだろう?」
「でも、あの、ちゃんと自分で払います」
「気にしなくていいから」

カバンを開ける手を遮って事も無げに言うと、確かめるように指先が前髪をすくい上げた。額が熱い。

「帽子は背が高く見えるからいや?」
「う…あ、えっと…」
「大丈夫、かわいいよ」

安心を与えてくれる笑顔と言葉が、蝉の声を遠ざけるほどの力強さでを揺さぶる。
さらり、容易くの口を封じる言葉に日差しどころではない火照りを感じた。










(ああ、なんてまぶしい)


++あとがき+++
友人以上恋人未満のじれったい嫁と本庄さん
数々の人に「え、まだ付き合ってなかったの!?」って聞かれる^q^
帽子をかぶせる仕草萌というコアなシチュエーション。隙間産業バッチ来いドンと来い
あまりの暑さに妄想膨らみました。
ラグジュアリーで大人な気遣いを見せる本庄さん萌
暑いときは本庄さんのネタを考えて涼をとります。もふそうは一番身近なエコロジー

タイトル*ララドールさまより


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