―かくん!勢いよく頭が振れて、支えになっていた頬杖が外れる。
速さを損なわないまま落下の一途を辿ろうとする頭と机の間に、間一髪、右手を差し込んだ。
現役時代に培ったキャッチの能力を思わぬところで余すことなく発揮して、本庄は安堵の息を吐いた。
「危ね…」
輪郭の境界線あたりに指を這わせたまま、ゆっくりと頭を横たえる。
開かれたままのテキストには解きかけの数式が止まったまま、右手にはシャーペンが握られていた。
学生の夏の風物詩とも言える課題テキストには、眠るまいと必死で抵抗した痕であろう、無造作なひっかき傷のように幾筋も線が書かれている。
そっとの指から筆記用具を抜き取ると、本庄は小さく苦笑いをこぼした。
「…また設問写し間違えたな」
はことケアレスミスが多い。
理系科目であればプラスマイナスの写し間違えや、展開式の記号がいつの間にかaからxに変わっていたり、文系科目であれば誤字脱字や解答の形式ミス。
気を抜くとすぐにうっかりしてしまうのが三者面談でももっぱらの議題らしい。
特に数学は、設問自体を間違えたまま一時間悩んでいることもよくあった。―今日もまたそれだったようで。
くうくうと寝息をたてるの髪を撫でて頬をなぞる。
分厚い、決して寝心地のよくなさそうな冊子を枕に熟睡する横顔は疲れているようにも見えた。
二年生の冬から、の勉強量は増えた。
が自分自身で選んだ進路を叶えるために、科目ごとの課題は単純計算で二倍。
何より望んだことを掴み取るための代償は、決して優しくはなかった。
部活と学業の両立は―特に全国区の実力を持つホワイトナイツの練習との両立は厳しい。
それでもこうして、二つの季節を跨いだ今でも、は決して諦めなかった。
それは、本庄にとっても誇らしい。
「偉いぞ、」
そっと囁いて体を持ち上げてソファに運ぶ。
身じろぎ一つしない長い手足は少しずつ少しずつ、大人になろうとしている様でいじらしかった。
抱えたごとソファに座ってクッションに徹するような体勢をとる。
横たえた拍子にさらりと流れた前髪に口づけて、本庄もまた、目を閉じた。
白い花びらは
とうとう
色づきはじめた
(あなたといる未来を目指して)
++あとがき+++
ケアレスミスは菱の実体験です。数学の式はプラスマイナス逆に始まり数字の見落としや記号がいつの間にかa→xに書き換えてたり、しかもそれに気付かない所為で余裕で一時間潰してましたね/(^q^)\
国語は結構得意だけどバ解答珍解答続出で問題の不正解の度合いがアホすぎましただばぁ
これだから脳内フルーチェは…OTL
学生さんは夏休みの宿題大変な時期ですよね頑張って下さいなエールを込めて!菱より!
エールの割に自分が一番楽しんでてすみませんでしたゲフケフ
タイトル*ララドールさまより
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