※ 連載夢主が帝黒学園の生徒という設定です。
それは何の変哲もないいつもの風景。
帝黒アレキサンダーズのパーティションに区切られたロッカールームで花梨の一言から始まった。
「ちゃん先輩、お誕生日おめでとうございます」
生粋のやんわりとした喋り方でそう告げると、可愛らしくラッピングされた紙袋をに手渡した。
身長157pの花梨とは頭一つ分以上の差があるは、
自然と見上げる形になっている後輩の顔をのぞき込むように首を傾げて微笑んだ。
「ありがとう、花梨ちゃん」
そう言って、ロッカーに並ぶ三つの鞄のうちの一つに花梨からのプレゼントを仕舞う。帝黒学園の指定鞄。
黒を基調とした四角い鞄の隣にはエナメル素材の大ぶりなスポーツバッグ、そしてその隣には―
色とりどりの包装紙に包まれた大きさも形も様々なプレゼントボックス達の詰まった紙袋がどさりと置かれていた。
「また今年もエラい大漁やな、」
「荷物更に増やして悪いんだけど、これは俺から。誕生日おめでとう。ほら、鷹も」
「・・・俺は今朝言ったよ」
一足先に78番のユニフォームに着替えていた平良が呵々と笑う。
一年生の時からの誕生日を目の当たりにしていた彼や安芸などはもう慣れっこだが、
一年前の今日、花梨を始めとする一年生の面々は目を丸くしたものだ。
紙袋の中身の主な出所は所謂、ファンクラブ。
帝黒アレキサンダーズのレギュラーメンバー中でも、一年目からタイトエンドを
務め上げてきたはその長身と優しげな顔立ちで絶大な人気を誇っている。
「すごい量だね」
「大和達の時に比べたらかわいいものだと思うけど」
「・・・は安請け合いし過ぎなんだよ」
「やから余計集まるんちゃうんか?」
茶化すようににやりと笑った安芸が横目でに目配せをする。
は基本、断るということを知らない性格で、人当たりもよい。
だから人からの好意は断れず、結果毎年紙袋のサイズが大きくなっていったのも勿論安芸は知っている。
「理事長が見たらまたびっくりするやろな〜」
「いや、あのね・・・言っときますけど、本庄さんの誕生日のほうがよっぽどすごいんだから。山よ、山」
「そらなぁ、元プロ野球選手の花形スターやったらファンかて仰山居てはるわ」
引退したとは言えど未だに根強い人気を誇る関西理事長・本庄勝。
彼の御仁の誕生日は、少なからずを複雑な気分にさせる行事だ。それは鷹も同じことで。
二人そろって神妙な顔で溜め息を吐いた様子を見て、ロッカールームの一角で笑い声が上がった。
「そう言えば、本庄理事には何か貰った?」
話の流れからはごく自然に、大和が聞く。
しかしはといえば歯切れの悪い生返事。
「あー・・・うん、それがね」
「?」
「・・・?」
口元を手のひらで覆って視線を落とす、はどこか心ここにあらずといった様子で動きを止める。
なんだか嫌な予感がする、と鷹は心の中で呟いた。
がこういうときは大抵、父さん絡みなんだ。
今日珍しくが朝練どころか午前中の授業にまで遅刻してきたのも、どことなく関係してる気がする。
そしてそれはやはり的中するのだけれど。
「――……‥みょうじ」
ぼそり、と小さな声で囁かれた四文字は、誰の耳にも間違いなく届いた。
「は・・・?」
「・・・え?」
「名、字・・・?」
「はははははぃい?」
「自分、今・・・!?」
「あはは・・・うん、なんかもう・・・ね、大人ってすごいよね」
俯いたのかすかに見える横顔が赤い。
自身信じがたい事だったか、生徒手帳の再発行を申請する為の書類は確かに鞄の中に入っていた。
誕生日に名字を貰った、つまり
「それは・・・入籍、ってことだよね」
「ちゅーことは」
「ちゃん先輩が、鷹くんのお母さん・・・」
「俺を見たってしょうがないだろ・・・」
大和、安芸、花梨、平良達4人の視線を受け止めた鷹がうんざりしたように顔を逸らす。
俺だって今初めて知ったよ、と憮然として呟いた。
確かに父さんとが恋人同士なのは、アレキサンダーズであれば誰もが知っていることだし、大体既には本庄家で生活している。
の両親にだって勿論許可は貰っているのだし、いずれは結婚だってするだろうとは思っていたがそれにしたってフライングもいいところだよ。
そう半ば呆れながらも今朝遅れたのは市役所に言ってた所為か、と今更ながら鷹は納得した。
鮮やかに伝う謀
(「―やるなぁ、理事長」
「大和、ちょっと黙ってて」)
++あとがき+++
いつぞやの日記で書いた「学生でも婚姻云々」ネタです。
二十歳まで待てなかった本庄勝さんフライング気味で奥様は18歳(爆)
いやっはっはっは、楽しいねっ←いきいき
プロポーズ夢の次は入籍ネタか自分。
なんか色々捏造しちゃいましたが設定的には
・原作軸の一年後
・夢主・平良・安芸→三年生
・花梨・大和・鷹→二年生のつもりで書きました。
相変わらず、鷹が苦労人。
本庄さんと夢主の仲はもはや公認。
それどころか夢主既に同棲までしちゃってる状況です。
夢だもの(黙れば)
リアルならば実際問題凄いことになっちゃうだろうけどそう言った細々したハードルは
本庄さんが全てものともせずに飛び越しちゃったっていうことで(*´皿`)ь(…)
ホントは新学期ネタ(出席番号が平良より後ろに→名字が本庄に変わったから的なもの)にしたかったのですが
あまりに季節はずれの為誕生日と言うことで。
タイトル*暗くなるまで待ってさまより
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