※ 【もう笑顔は隠せない】の後日談です


失言。
まさにそう思った。
たった今空中に飛び出した四文字の音は、そんなに大きな声でなかったにも関わらず圧倒的な存在感でその空間を支配する。
蝋か何かで固められたかのように、周囲の人間は動かない、勿論、鷹も。
たった一言、それも日常であれば誰もが口にしたことのあるだろうたった四文字の言葉が凄まじい威力を発揮している。
しかし言葉自体は何の問題もないのだ。
ここで不味かったのは、鷹が、誰に対してそう言ってしまったからに他ならない。
平良も安芸も天間も大和も花梨も微動だにせず固まっていた。
このまま動かなければいいのに、とあながち冗談ではなく鷹は思う。
しかし、それに反して大気は時間を取り戻しつつあった。
ゆっくり、時限爆弾のカウントが動き出し

そして

「ぶわっはっはっはっはっは!!」

平良の爆発的な声と共に、どっと笑いが空に響いた。

「っ・・・くくっ、ヘラクレス氏、そんなに笑っちゃ鷹が可哀相だよ」
「ぶはっ!それは大和に言えた台詞じゃないぜっ」
「せ、せやせや・・・っ!お前ら、ちょっ、笑いすぎや!やめてくれ笑いが伝染る!!」

好き放題馬鹿笑いする4人が、連鎖反応を起こして凄まじい威力を放つ。
大口を開けてからからと笑うのが平良、腹を抱えて息も絶え絶えに引きつった声でひーひー呻くのは安芸、笑いのお手本のように愉快を全面的に押し出す大和に、目尻の涙を拭っている天間、唯一控えめに(けれど心底嬉しそうに)クスクスと笑うのは花梨だ。嫌になる。
誰が一番腹が立つとかそんなことはこの際横に置いておくとして、鷹は乱暴に本を閉じた。

「仕方ないだろっ・・・家ではそう呼んでるんだから」
「ん、いや、それは判ってるんだけどさ、こう面と向かってそう呼んでるとこう・・・笑える
「うるさい、笑うな」

ゴスッと口の減らない大和の向こう脛を蹴り飛ばす。
大体、こんな特殊な状況下でなければ誰があんなふうに呼ぶものか。
部内に母親が居る(それも生徒として)なんて、世界中探してもきっと鷹だけだ。
18歳の誕生日を迎えたと父親が籍を入れてからまだほんの1ヶ月。
フライングもいいところ、堪え性がないと父を責める気にはならないが(むしろよくぞここまで待ったとすら思う)今度ばかりは閉口だ。

『あれ?は』
『どこ行ってんアイツ』
『母さんなら監督に・・・・』


そして、冒頭に戻る。


 最も愛らしいタブー


監督に呼ばれてグラウンドから離れたが、戻ってくる五分前のお話。


++あとがき+++
天間留年かよ!とかいうツッコミはナシの方針でお願いします(爆)
【もう笑顔は隠せない】の後日談。
鷹は家では「母さん」、学校では今まで通りの名前呼び。
たまに間違えて学校で母さんって呼んでたら萌えるよねと言う話(笑)
きっと周囲は大騒ぎ^q^
ホントは【もう笑顔は隠せない】のより先に書いたのがこちらのお話だったんですが
おまけのつもりでここのあとがきに書いた話が意外に長くなりそうだったので一話として切り離しました。
ファミリーネタは楽しいな〜(うふふ)


  タイトル*ララドールさまより


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