「たたたたたた鷹くん!」

ぱたぱたと相変わらずどもりながらこちらに駆けてくるのは我らが帝黒アレキサンダーズのクォーターバック、花梨。
血相を変えて焦る花梨に見慣れている鷹は、あまり動じたりはしない。
肩で息を整えるたびに揺れる三つ編みの先を眺めながら鷹は次の言葉を待った。

「これ、さっきクラスの子ぉらが持ってきてくれたんやけどね」

そう言って、表紙を掲げる。
・・・明らかに、週刊誌。

『年齢の差に涙!?越えられない、立ちはだかる壁』
『胸中はいかに…』

自分の手には取らず広げられたページの大見出しだけをざっと流して、鷹はそれ以上文字を読むのをやめた。
安っぽいモノクロが、いやにそれっぽく父とのツーショット写真を印刷している。
うつむきがちなをのぞき込むように父さんが身を傾げて頬に手を添えていた。
確かにが涙目であることはぎりぎり確認できるが、ある意味でその期待をことごとく裏切る二人である。
どうせ目に入ったゴミがなにかを取ろうとした、というあたりが妥当なところだ。(コンタクトがずれた、とかさ)
ただでさえ目立つ二人なのだからあれほど周囲の目には気を配るようにと(関東の理事長に)釘を刺されていたにも関わらず餌食になってしまった両親に鷹はもはや溜め息しかでない。

「こんなん書かれて、ちゃん先輩達平気なん・・・?」
「大丈夫だよ、花梨。父さんとが破局なんて有り得ない」

根本的におおらか過ぎる父さん達だ。
ある意味で二人の世界を築いているというか、なんというか、とにかくそんな心配の要らないのが鷹の父さんと母さんなのである。
(ただいくら何でも不用意にベビー用品店に行くのだけは控えてほしかった)(出産祝いなんて通販で選べばいいのに、何で妙なところで真面目なんだ)
静かな感慨にふける鷹の意識を花梨の声が呼び戻す。

「でも、鷹くん、これ結構みんなに知れ渡ってしまうんとちゃう・・・?」
「―」

忘れていた。
あまり広いとは言えない鷹の行動範囲内では周知の事実だが、世間的どころか校内にすらまだ知られていない事実である。(というか、言いふらすことでもない)
学生と、後輩の保護者との恋愛事情に寄せられる好奇心は少なくなさそうだ。

・・・面倒くさい。

「・・・・家帰ったら叱っとく。花梨も、あんまり下手なことは言わないで」

はぁ、と本日最長の溜息を吐くと窓枠に肘をもたれかける。
目を閉じて、途端に浮かぶのはオロオロとすると苦笑いをする父さんだ。
多分あの二人はこんな感じ。
でもそれすら、仕方なく思えるのは、何より近くで見てきたからだ。
年の差だとか、立場だとか、そういうのをずっと考えてきたのを知っているから、あまり他のことには振り回されてほしくない。
それだけを鷹は少し心配する。

(まあ、大丈夫だとは思うけど)

ただ、もう少し自分達が目立ちすぎる夫婦だとは自覚してもらおう。
場合によっては理事長にも協力してもらって(―あの二人の良き理解者だから)
そこまで考えを纏めて、細々とした煩わしさを吹き飛ばすように、鷹は小さく息を吐いた。



 ナイトの

(「鷹くんのお父さんも、有名人やから大変やね」
 「まあ、でも・・・それがあの二人だよ」)


++あとがき+++
ゴシップネタ^ ^←うわぁ…
何かとすっぱ抜かれる本庄夫妻、息子はフォローが大変です。
目にゴミが入っただけでこの騒ぎ。ご愁傷様←…
赤ちゃんデパートのある通りを車で走っただけでできた妄想に乾杯
たまに従兄弟の子とかを本庄さんが預かって隠し子説とか出てればいい^q^
とにかく菱が言いたいのは空に太陽がある限り本庄勝はスターであるということです(ぎゃふん)

  タイトル*ララドールさまより


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