※ 312th down「新世代へ」ネタバレ注意(王城夢主設定)
呆然と。まさにそんな感じで、気が抜けたように、ぽかん、と口を開ける。息を忘れる。
小さな小さな空気の摩擦は、それだけ。そう、それだけなのに。
ドリンクに口を付けたままでバッド、パンサーはタオルで額を拭う手を止め、グローブをはめる途中なのがタタンカ、あのドンですらヘルメットを半端な位置で掲げたまま、クリフォードだけはくるくるとテーピングを巻き続けていた。
10の瞳が彼女に向く。そう、たったいまヘルメットを脱いだばかりの、にもかかわらず相変わらずの特徴的な髪型を微塵も崩さぬままのライオンを。
「、センパイ」
「はい…え?なななな何々どうしたの急に?」
呼び慣れぬ言葉を名前に冠して呼べば、瞳を丸くしては眉根を寄せる。
いや、どうしたのはこっちの台詞だ。無言のメッセージを受け取ったのか、が数歩後退してたじろいだ。
コミックならば頭にクエスチョンマークがいくつか浮かんでいることだろう。
ヘルメットを胸に抱きしめて、不安そうな(言い替えるならば捨て猫のような)瞳がぐるぅりと五人を見渡した。
「、…」
「は、ハイ」
「今の、……舌打ちは、お前か?」
「え、あ…す、すみませっ、あの こ、この間…クリフォードさんに教えてもらって、それでその、つい」
あまりの凝視に耐えかねたのだろう、フィールドを除けば元より気の弱い彼女だ。
ヘルメットが髪に引っかかったから、と泣きそうな顔で告げるに、はっとした体でドンが囁く。
「いや、別に怒ったわけではない。驚いたろう、悪かった」
「つ、次からは気をつけます。ご、ご めんなさい」
「あぁ、泣くな泣くな!ごめん、俺達が悪かったよ、な?」
「タタンカ、」
「言うな、わかってル」
俯きかけた顔を両手で挟み込むようにしてバッドが慌てて宥めに入る。
ドンの指名を受けて、タタンカがの肩を叩いた。
「、顔を洗ってくると良い。おいデ」
奇跡の身長差にある顔を覗き込んでうんと優しく説き伏せるように言うと、誘導させるように肩を引く。
その姿が十分に、十二分に離れたのを確認してから、バッドとパンサーはぐるん!と体の向きを変えた。
「クリフォード!!」
「何だよ」
「な、何だよじゃないよ!さんに舌打ちとか仕込むのほんとにやめて!」
あのが、アメフトの試合中ならともかくあの、普段はほのぼのと穏やかに控え目で気弱で猫背で心優しい、あのが、舌打ちなど、色んな意味であってはならない事態だ。
主に、仕込んだのがペンタグラムの一角を担うクリフォードであるなどと、言うまでもないあの人によもやバレた日には!(うわっ、今ゾクッときた)
しかし必死に詰め寄るパンサーやバッドや、遠巻きながらも難しい顔をしたドンの眼差しを受けても、クリフォードしれっと優雅に足を組み替えるだけだ。
その強気ちょっとに分けてかわりにあのマイナスイオン全開の優しさに触れろ!バッドは心の中で叫ぶ。
「あのヘタレがあの顔で舌打ち覚えりゃ面白ェもんが見れんだろうが」
「おま、チームジャパンのってかの旦那に知れたらどうすんだよ!!あの人の殺人ボール見ただろ!?」
「ハッ、俺の敵じゃねぇな」
「ああクソ今俺はお前のポジションが最高に憎い!」
「…クリフォード素直に吐け。他に何を吹き込んだ」
「一通りだ」
「に仕込む楽しさ覚えてんじゃねーやこのドS王子!!」
「クリフォードの馬鹿ぁ――!!!」
ハン、と鼻を鳴らして顎を上げるクリフォードは微塵も聞く耳を持たずに抗議をあしらう。
よほどで遊ぶのが気に入ったらしい。
何でも素直に受け入れる彼女のからかい甲斐はわからないでもないが、今後この二人から極力目を離さないでおくことをドンは密かに胸の内に誓った。溜息が出る。
蒼天の下、そよ風に揺れるクリフォードの金色の髪は、の冠する二つ名の生き物のようにふわりと太陽に瞬いた。
誰にも執着しない君が
執着するあの小さな星
(――水道にて
「…もういいかな?」
「駄目だ、赤い。もう少し冷やそウ(バッド達はまだしばらくかかりそうだナ…)」
「あの、あと、…なんで耳ふさぐの?」
「…水が入ったら大変だからダ」)
++あとがき+++
副題・頑張るオカン的タタンカ(爆)
嫁が王子色に染められてますよ本庄さん!
王子のヴィジュアルもライオンっぽいから二人並んでたら意外とあれかなぁと思います。和む。クリフォードは悪い兄ちゃん
日本チームの場合もほぼ似たような現象が起こります。というか当初はりっくんと嫁のスーパー小話でした(暴露)
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「チッ」
「……………………先輩、今、舌打ちしました?」
「え?あ、ごめん…つい。嫌だった?」
「い、いえ…(先輩舌打ちとか出来るんだ)」
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嫁の舌打ちはかなりレア。
王子の煽り方講座では一通りのブラフをレクチャー(お約束ながらスパルタで)
クリフォードさんはのフィールド上のSをどんどん俺好みに引き出す心算←オイ
ただし王子にとっては/た/ま/ご/っち感覚です。
言うことすんなり聞くプライドの低い嫁で暇つぶし。あくまで片手間なのがポイント。
いやーやっぱこのノリが楽しいな!
相変わらずシチュエーションが甚だ謎←
タイトル*流星雨さまより
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