「“試合中のまっすぐな目と、普段の優しい姿を見て”」
  「ほ、本庄さん!!」
  「“もっとたくさんの表情を見てみた”」
  「もう!!や、やめてください!恥ずかしいです」
  「そうだよなあ、これはいただけない。大体口説き文句に華がねえ」
  「〜・・・そうじゃなくて!」

 腕を伸ばして手紙を取り返そうとしても、流石に本庄のリーチの長さにはわずかに及ばず、
 わたわたと掌を動かすだけの徒労に終わる。
 スーツにしがみつく形で目一杯背伸びをして精一杯手を伸ばすの珍しく愉快な様を見て、
 本庄は少し溜飲が下がった気がした。(あくまで、少し、だが)

  「もうっ、本庄さん!!」

 顔を真っ赤にして怒るは果たして気付いているのだろうか。
 なかば本庄に預ける形でぴたりとくっついている体躯を容易く抱き締めることが、本庄にはできるということを。

  (判ってねぇだろうなあ)

 が思っているよりも、よっぽど図々しいラブレターに不快感を感じているということを。

  ―今だって

   簡単に、本庄の年上の矜持という防波堤が決壊してしまったということを。

  「わ、」

 ぐい、とに覆い被さるように押し倒す。(長身だが細いの頭や肩をぶつけないように庇うことなど本庄には朝飯前だ)
 反転した視界に目をぱちくりとさせて呆けているのをいいことに本庄はの体をぎゅうぎゅう抱き締めた。

  「ほん、じょう さ」

 ようやく状況に追いついてきたが本庄の下でもがいたがそんなことはお構いなしに髪に口付けを落とす。
 髪型はつんつんと跳ねるようにセットされている髪が本庄は好きだ。
 その髪が見た目とは裏腹に、つやつやとしなやかなのは、本庄さえ知っていればいい。
 フィールドでは勇ましく、性格は温厚で穏やかなが、本庄の腕の中ではこんなにも幼く可愛らしい顔を見せるということも。



  


  (返事は俺が後で心を込めて書こう。次に手を出したら生まれてきたこと後悔させてあげるよってね)


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