「・・・何これ」
嫌悪感もあらわにそう呟いた彼は、長い指先で毛虫でもつまみ上げるように手紙に触れた。
白い便箋に負けず劣らず色白な指が薄っぺらい紙に染み込んだインクを流し読む。
右から左に、上から下と視線が進むにつれて端正な顔の不快指数が目に見えてどんどん上がっていった。
「マ、マルコ」
「・・・・・・」
ああ、すごく機嫌が悪そう
眉間のしわがいつもになく深いよどうしよう普通に怖い
静かな殺意に満ちた恋人に、は冷ややかな汗が背中に流れるのを感じた。
「」
「ん?うん!?」
シュボッと何かがはぜる音がして
少し焦げ臭い匂いが鼻や喉を刺激する。
めらめらめらと燃えているのは何を隠そう甘い好意が示されていた紙で
出火原因は今まさにマルコが手に持っているジッポライター。
ぽい、とコンクリートの地面に投げ捨てられたラブレターは
ゆらゆらと煙を上げながら苦悶に身をよじるようにみるみるうちに形を変える。
そんなことお構いなしに、マルコはゆるり、と腰に腕を絡めてきて顎に手をかけを見つめる。
青い瞳の奥はじりじりとくすぶって、柳眉はその形をいびつに変える。
「こーゆーのはわざわざ読む必要ないっちゅー話」
がり、と耳に噛みつかれて
耳元で囁かれて
「いい焚き火にはなったね」
ハン、とサドっ気丸出しで嘲笑って燃えカスを踵で踏みつけ踏みにじるこの人に
対抗できるなんて思う方が無理な話
世の中の怖さ、教えてあげる
(俺のに手を出したんだから、もう死んでもいいんだよねっちゅー話)
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