どうやったって届かない位置でシンプルな便箋がひらひら揺れる。
巨深高校の制服のように青い色の封筒は、大きな右手によって半ば握りつぶされかけだ。
深い青とは対照的な金色の髪がぶわりとなびく。

「だーめー!だめだめだめだめ!!こんなの読まなくていーって!なんだよコイツ、図々しいな俺のにっ!!」

いくら背伸びをしても、以上に背伸びをする健悟にリーチの長さのコンボには適わず終わる。
実力行使で取り返すのを諦めたは腕を上に伸ばすことをやめて代わりに制服のシャツを思いっきり引っ張った。

「け・ん・ご!ちゃんと断りに行くから返して」
「無理ダメぜったい!こんなのは封印!!」
「そんなとこに仕舞ったら見つかっちゃうでしょう筧くんとか大西くんとか大平くんに」
「やだ!!」

には届かない棚の一番上に手紙を仕舞うと、健悟は半ば押さえ込む形でを抱え込む。
腹いせのようにぎゅうぎゅうと抱き締めてくる二本の腕はそれなりに本気で結構苦しい。
まるでこの世の終わりのような顔をして首をぶんぶん横に振る健悟の首筋を落ち着きなさいとぺちりと叩いた。

「なんでそんなに嫌がるの。私は浮気なんかしたりしません」
「わかってるけど・・・けどさぁ〜・・・」
「けどの続きはなに?」

先を促せば、物事をはきはきと言う彼が珍しく言いよどむ。
もじもじ、いや、そわそわまたはおどおどと、とにかく挙動不審に雰囲気が落ち着きなく変わった。

ちょっとかわいい。

そんな風にうっかりほのぼのしてしまっている内に、健悟はこともあろうに話の渦中にあるラブレターの差出人を見つけてしまっていて

「っあ―――!!!???そこのお前―――!!」
「こら!健悟!!」

しゅたー!っと目にも留まらぬ速さで駆けていく健悟はみるみるうちに彼に詰め寄るともとより逞しい体をもっと大きく見せるような立ち振る舞いで胸を張る。
ぴっ!音がしそうなぐらいに親指で自らを指すと、すう、と息を吸い込んで高らかに声を張り上げた。

「言っとっけど!俺の方がのこと好きだからな!!」
「もー!わかったから帰っておいで!」


 




(俺の大好きな君にラブレターを書いていいのは俺だけ!)


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