※ 312th down「新世代へ」ネタバレ注意

凄まじいほど綺麗な、型にはまった土下座を見た。
母国日本ですらお目にかかったことのない光景にはただただ目を丸くする。

「ホンッッッットすみませんでした!!ごめんなさい反省してますお願いします捨てないで!」

しなやかに長い手足をコンパクトに折り畳んで、パンサーは謝罪を口にする。
(あ、ああ…固まってる場合じゃない)あまりに頑ななその姿に気圧されながらパンサーの肩を叩いて二の腕を引いた。

「ちょ、ちょっと落ち着こう?ほら、どうしたの急に」

やっと顔を上げたパンサーの真っ直ぐな瞳がを射抜く。
堅く引き結んだ拳を膝の上に置いて、心底申し訳なさそうな顔でパンサーは言葉を紡いだ。

「いや、だって俺、今までちゃんと、す…好きとか、そう言うの一回も言わないで、なんか、ズルしてばっかりって、ラブレター貰ったって聞いたときにやっと気付いて」
「ぱ、パンサー……」

なんだろうこのかわいい生き物私を照れ死にさせる気か。
年下の恋人のある種のテロに、の頭が混乱を起こす。

「中途半端なんかじゃなくて、俺ちゃんと全部言います。一緒にいると凄く幸せだし、嬉しくなる。やっぱり大好きで、ずっと、側に居て欲しい。好きで好きで、ホントどうしようもないんです。だから、他の人好きにならないで下さい」

正直でひたむきな言葉が甘やかにを包む。
未だ地べたで正座を崩さないパンサーの前にしゃがみ込んでは静かに呟いた。

「―――………ごめんちょっと泣きそう。抱き締めて」

肩に凭れかけさせた目元の涙が黒のタンクトップに染み込んでいく。
長い腕を余すことなく活用したパンサーは、優しくを抱き締めてあやすように背中をさする。
随分と長いことそうして、やっと顔を上げたの落とした口付けに、パンサーのあたたかな笑顔が彼女を待ち受けていた。



 



(誰にも渡したくない宝物があります。とても綺麗で優しい人です)


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