ふわふわもこもこ、まっしろな毛がゆらゆらなびいて柔らかそうな質感を放つ。
オーソドックスな赤ではなくダークブラウンの円らな瞳は、辺りを見回すようにくるりと瞬きを繰り返して忙しなく動き回っていた。
ひょこ、長い耳が傾いたり戻ったりして、バッドの襟元を掠める。
大事そうにその小動物を腕に抱えたバッドは、至極大真面目に言葉を発した。

「取りあえず聞きたいんだけどさ、ウサギと結婚できる国ってある?」

普段からおちゃらけた印象を色濃く残すハリウッドスターであるが、それを差し引いてもバッドの声は真剣そのもの。(話の内容がおかしいことを二千歩ぐらい譲っての話だが)
ここは確かミーティングルームで先程までは真面目にフォーメーションの話をしていたはずだが、とタタンカは心の中で今までの出来事をなぞった。
フォーメーションの確認をして、作戦を打ち合わせして、そんな折りに、これだ。
俳優業の小用で練習に遅れていたバッドが、この部屋に足を踏み入れた時には、その手にウサギを抱えていた。
もともとの小さな生き物はバッドとの差で余計と小さく見える。
恐らくはそのウサギが、婚姻対象で、だから『ウサギと結婚できる国はあるか?』と。

―…一体この男は何がしたいんだ、バッドを除くペンタグラム全員の心が、一つになった瞬間だった。

何とも形容しがたいぬるい空気が部屋中に充満する。
バッドの質問の趣旨を計りかねたパンサーが、恐る恐るバッドの名前を呼んだ。

「ば、バッド…?」
「とうとう頭沸いたかテメェ」
「違うって、がウサギになっちまったんだ、って!

は?、またもや結束力抜群のペンタグラム(くどいようだがバッド除く)の疑問が零れ落ちるより早く、大人しくしていたウサギがその言葉を遮るようにバッドに噛み付いた。
…心なしかその瞳が鋭くなったような。

「何すんだよ
「急にそんなこと言われて対応出来る順応性と想像力を兼ね備えたのはバッドだけだっての!!ってか開口一番に何聞いてんだバッキャロー!!

流暢な英語が、するん、と呼ばれたウサギの口から発音される。
怒っているときは、すこし乱雑になるその話し方。
バッドの言葉に対する的確な指摘。
どこか聞き覚えのある、その声は――……

「――……なるほど」
「おぉふ…この磨き上げられたツッコミは…
「…、だな」
「なんでまたウサギ…」

間違えるはずがない。
バッドに対して唯一正すことを諦めないある種の勇者。アメリカチームの、影の功労者。

「え、ちょ、待った待った待った!みんなどんだけ懐深いの!?

ピン!と無駄に背筋を伸ばして小さな頭がペンタグラムを見渡す。決定的だ。
バッドよりもよっぽど常識を持ったウサギがであると、星々は確信を抱いた。



07.まったく理解できない



++あとがき+++
始めてしまった…らぶらびシリーズ猫でも犬でもなくウサギ化に無性に萌える。
てかお星さまとウサギのツーショットてプププ…^q^とか思いながら書きました。
最近菱の中で急速に株を上げてきたバッドがお相手。小噺的な感じで読んでいただけたらなあと思います。
ちなみにウサギさんは子ウサギよりちょっとだけ大きめな感じです。
怒ったりツッコんだりうなだれたりと表情のある常識人ウサギさん。色んなキャラと絡めたらいいな!


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