たし、たしたし。

キーボードのタイピングされる音、時折ペンが紙を走る音。
試合や選抜メンバーのデータを忙しなく見比べ、入力作業を繰り返す、………うさぎ。
かつ、ころん。かねてより持ちづらそうにしていたペンが力無く倒れた。
自らの背丈とさして変わりのないペンは持ち上げるのも一苦労のようで、一見格闘するようにも見える。
ひょい、前足が引っかいていたペンを持ち上げてに差し出した。

「ありがと、タタンカ」
「どういたしまして」

再び倒れてしまわないように人差し指でペンを支えたまま、タタンカは目を伏せる。
オフェンスとディフェンスに別れて行う練習には、をひとりにする訳にはいかない為、パンサーとクリフォードが先に、入れ替わる形でタタンカが参加することになった。
取り合えずば、ミーティングルームで待機。
その間に、は出来うる限りの仕事をすると決めたのだった。
の主な仕事は主務業、次にマネージャーのような雑務であるがどちらとも『リーダー』の名に違わず膨大な量をこなしている。
彼女が居なければ回らない仕事、滞るサポートを出来るだけ減らすために奮闘する姿は(例え見た目がうさぎであろうとも)やはり、その人だ。
タタンカとしては出来ることならデータ処理も手伝いたいのだが、普段からの一手に担われたそれは、到底タタンカには務まりそうにもなかった。
そして何より、選手にサポート業を手伝わせるということを、本人が頑なに拒むのだ。
真面目な彼女の、考えそうなことである。
ペンを支える傍らで、有名なイソップ童話がタタンカの頭をふとよぎる。
うさぎとカメの競争の話、努力が才能を凌駕する逸話だ。(この場合がうさぎなので当てはまらないが)
ちなみにリーマスじいやの話では腹黒い亀が家族を使ってうさぎを騙す趣旨のなんともエグい仕様のものもある。
そんな事をつらつらと考えていたタタンカの指先をふるり、と長い耳が掠った。
つぶらな目をしばたかせて頭をふるうの手からペンを引き抜いて、指先で眉間(であろうと思われる)辺りをぐりぐりとほぐすように撫でる。

、少し休んだらどうだ?」

う〜、と小声で唸るにそう声をかけてミネラルウォーターのペットボトルを一本取り出す。
ちょうど良いサイズものを見つけられなかったタタンカは、捻ったボトルのキャップに溢れないよう気をつけて水を注いでの前に差し出した。

「疲れただろう?」
「ありがと、タタンカ」
「どういたしまして」

先程と同じやりとり。

「もうすぐバッドも戻って来る頃だ。またパソコンいじってるとこ見せたらうるさいからもうそろそろ止めておいたほうがいい」
「…果てしなく賛同。続きはまた明日にする」

タタンカの言葉であからさまに嫌そうな顔をしたが耳をほんの少し傾けた。
つくづく苦労性である。

「ん、ご苦労様」

パソコンのシャットダウンをしてやりながら、タタンカはその背中をぽふんと撫でる。
ひょこり、薄く開いた扉からパンサーが顔を覗かせた。

「タタンカ、お待たせ」
「あぁ、今行く」
「とっとと入れ」
「いたっ!ちょ、クリフォード」
「こら!意地悪しない!」

無駄にこそこそと振る舞うパンサーの後ろから、クリフォードが力ずくで扉を開く。
仁王立ちのように背筋を伸ばしたを腕に乗せて、タタンカは苦笑いを零した。

「じゃあ、後は頼んだ」
「りょーかい」

パンサーの掌にを降ろして、ヘルメットを持ち変える。
ドアに手をかけたタタンカに三度、が囁いた。

「ありがと、タタンカ」
「…どういたしまして」

やはり、だ。怠け者のうさぎでも、努力家なカメでもない。ましてや勤勉なうさぎでも。
正真正銘、アメリカチームのサポートリーダー。
その事に、何故だか少し安心している自分がいた。



04.思わず笑ってしまう



++あとがき+++
タタンカとうさぎさんの巻。
無駄にほのぼの、と言うか未だにタタンカの性格的描写が原作できちんとされていないのでキャラがつかめませんでした。
315th downではものっそいべっぴんさんだったぐらいしか記憶にない(爆)
お星さまの中では一番の常識人&苦労人だと信じてます。

とかなんとかしているうちに彼の本性が発揮されてしまってビビりあがったわたしです。
だいぶ前に書き上げたままUPするの忘れていました(爆)
タタンカはまださん=うさぎさんという事実に追いつけていなかった様子。大丈夫、それが普通です
どこぞのワイルドハリウッドはすんなりと結婚を前提としたおつきあいをする気満々でしたが普通は戸惑うものですからネ!←良い笑顔
2ミーター×小動物の破壊力は絶大。もっと絡めたいな!


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