しゃらん、白銀のプレートに華奢なチェーン、それだけを見ればブレスレットにもよく似ていた。
うっすらと上品に燻し加工の施されたシルバーは、日本円の五百円玉をもう少し伸ばしたぐらいの直径を有する星型をトップにあしらい、それよりささやかなサイズのものがまた幾つか鎖を彩っている。
人がするネックレスのミニチュア版のような造りのそれをうやうやしくの首に一周させるとかちり、背後で留め金のはまる音がした。
きらり、階級バッジのように首元で瞬く銀の感触を、目尻のあたりが引きつる感覚を、うさぎの姿では感じる。
満足そうな顔をして微笑んだバッドを見やりながら、は最も知りたくない答えを知るために口を開いた。
「…………なにこれ?」
「なに、って首輪」
「―っバッドなんか大っ嫌いだ!」
されるがままになっていた手足をじたばたと暴れさせて、の全身が怒りに逆立つ。
人の姿であればインテリを感じさせないほどの右ストレートを繰り出していたことだろう。
しかし哀しいかな、子うさぎより心持ち大きいかというぐらいの全長しか持たないはいとも簡単にバッドの両手のひらにすくい上げられた。
子どもをあやす父親がそうするように、ひょい、と宙に持ち上げられた(俗に言う高い高いの図だ)小さな彼女はますます機嫌を損ねているというのにこのハリウッドときたら!
「降ろせ悪趣味ハリウッド!」
「ピンクゴールドのほうが良かった?」
「ふっ…ざけた事をぬかすのはその口か―――――!!」
ネコパンチならぬウサギパンチで決死の抵抗の末に自由をもぎ取って、びゅんっ!パンサー顔負けの俊敏さでバッドの膝から降り立つと、は事の成り行きを静観していたクリフォードやパンサーの元へと一目散に駆け寄って耳を逆立てる。
不貞腐れたようにジャケットに潜り込んできたに膝の上を提供してやりながら、クリフォードは溜め息を吐いた。
ペンダントトップならぬカラー(首輪)トップがの首でゆらゆらと揺れる。
「もう嫌だ、クリフォード、これ外して」
もこもことしたジャケットのファーと一体化するように頭だけを覗かせてが唸った。
丸々としたつぶらな目が半月を横にしたように鋭い。
憤慨する小動物のぶわりと膨れた毛を撫でて、2発目の溜息を吐いた。
と同じく瞼を半分下ろしてバッドをねめつける。
「順を追って説明しないお前が悪い馬鹿バッド、締まりねえ面しやがって」
揺れる星の裏側には、バッドの家の住所や連絡先が彫り込まれていた。
万が一、に何か不遇があった時を思ってのことだろう。基本的には思いやりだ。
しかし、これでは怒るのも無理はない。
ただでさえデリケートな状況だというのに、今朝の今朝まで人間だったがいきなりうさぎ扱いをされれば憤るのが当たり前だ。
そんな意味ではないと、説明するのが先だろうに、バッドはなぜそれには気付かないか。
気にしていないからだ。うさぎだろうがなんだろうが、“”という存在であればそれだけで十分だとバッドの振る舞いは語る。
ただし、は簡単に割り切れない、というかそれが普通だ。
純粋な、思考回路の違いにクリフォードは辟易する。
心が広すぎるのも問題だね、パンサーが的を得た呟きを落とした。
「だって迷子になったらどうすんだよ?ウサギは寂しいと死んじゃうんだろ?」
「アンタ元に戻ったら覚えてなさいよ…!」
さも当前のように呟いたバッドに足りないのは言葉。
明確な意思を伝えるには、―
す、バッドが床に膝を突いた。
目線をと近付けて、まっすぐに顔を覗き込む。
「、そんなこと言うなよ。お前が居なくなったら俺どうしたらいいの?」
「恥ずかしい台詞を吐くな………!!!」
05.苛々
++あとがき+++
ほんと立場が変わらない1人と一匹
首輪ネタはやっとかにゃいかんだろうと言うことで^q^無意識のうちにクリフォさんを安全地帯と見なすワイフ(笑)
最後のセリフにはちょっとときめいたワイフwwwうさぎでもツンデレwwwちなみに首輪はブランド物です。
わざわざシルバーのプレートに住所まで彫らすハリウッドの愛(爆)
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