かたん、小さな物音がする度に長い耳はぴくりと動いた。
気付いているのかいないのか、素知らぬ顔で新聞に目を通すを―もっと言うなればちょこん、と新聞に乗っかって文章が右端に行くに連れてひこひことポジションを変えるを―写メないしムービーに納めたい気持ちをこらえて、バッドは雑誌の陰からその姿を盗み見る。(ああ今目ぇこすってた超かわいい)
時刻はちょうど23時30分、欠伸をひとつ零してバッドは雑誌を閉じた。

、まだ読む?」

重ねた枕を背もたれ代わりにしてベッドで上体を起こすバッドの投げ出した足に広げた新聞の上でひくっと耳を揺らしたはふるふると首を横に動かす。
ねる、そう呟いた彼女は薄い紙の束を器用に畳み出した。
膝の少し上あたりをてこてこ歩き回る姿を見守りながら、今度は伸びをひとつ。
綺麗に四つ折りにされた新聞をサイドボードに置くとバッドはシーツに改めて身を横たえた。
とふとふ、歩きづらそうにベッドを横断するの足音だけが聞こえる。
それだけを頼りに手を伸ばしてふわふわの手触りをすくい上げるとそのまま枕元まで持ち上げた。
シャンプーの甲斐あってかすべすべの毛並みに頬をゆるめて唇を寄せる。
ほんのりあたたかい体温に心地よさを感じながらバッドは目を細めた。

「一緒に寝る?」
「いい、バッドと寝たらつぶれそう。ひげくすぐったいし」
「えぇー大丈夫だって!ほらおいでー」
「うるさいの!おやすみっ」

オープンにシーツをめくったバッドから逃れるように、はとんっと持ち前の身軽さでベッドから下りていってしまう。
それでも部屋の中では一番バッドに近い位置にあるラブソファに身を落ち着けたのは果たして偶然だろうか、ブルーの生地に合わせたクッションの上で大人しくなったを見て自然と頬がゆるんだ。

「おやすみー…ってうわやっぱ寝るときは丸まって寝るんだやっべ、ちょ…写メとってい?」
「ハゲしねひげ」

本日何度目とも知れないそっぽを向くの方に寝返りを打ってバッドは間接照明のスイッチをonに変える。
暖色のライトに眠りを誘われたのか、さっそく耳が低くなった後ろ姿を見やりながら起き上がってシャツに手をかけたその瞬間

 ―にぃ

「!!」
「んぁ…野良猫?」

窓越しに、かすかにごそごそうごめく音が聞こえた。
こんな時分に珍しいと首をもたげて、ふと思い出したことがひとつ。
窓のほうを見やっていた視線をぐるりとに向けると案の定、暗がりながらも引きつった顔の丸い眼差しと目があった。

は、昔から猫が苦手だ。
理由は聞いたことがないけれど、『親の敵を見るような目で』猫を凝視するとドンが笑っていたのを覚えている。
かりかりと窓を引っかく音でよけいと、の毛が逆立った。いたたまれない。
脱ぎかけだったシャツを着直してバッドはを呼ぶ。


「……………なに」
「左側にがいないと落ち着かないからやっぱり一緒に寝て。俺さみしい」

言うが早いかひょいっと手を伸ばすと体勢を仰向けに変えて鳩尾のあたりにを乗せる。
薄手のコットン素材越しに軽すぎるぐらいの重みと可哀想に早鐘のように打つ鼓動が伝わった。
手のひらにほとんどすっぽり収まってしまう背中を撫でて、落ち着かせようと試みる。
体積を出来るだけ小さく小さくしたがるその姿に少なからずときめいたのは言うまでもない話だ。



02.動揺を隠せない



++あとがき+++
ワイフの弱点露呈(笑)
バッドさんこれでも一応写メとかは自制してるほうです←
らぶらびは擬音を多用したくなる&うさぎさんの台詞から漢字を減らしたくなる不思議
しかしうさぎさんと寝るハリウッドさんは想像すると色々犯罪^q^


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