する、白磁のような滑らかな肌を纏った指先が軽やかに毛先を伝う。
それなりに骨張った輪郭に、短く切りそろえられた爪、手のひらはほのかにメンズフレグランスの香りが漂った。
ふわん、こそばゆいほど優しい手つきと緩やかな動作がいかにも優雅ではなんとはなしに居心地が悪くなる。
すらりと通った鼻梁は間近にあって、透けるような色白の頬は少しひんやりとしていた。
長い睫毛に縁取られた眼差しは彼らしからぬ穏やかさで伏し目がちになったまま、いつもの精彩を欠く。
ぽふん、毛並みにうずまるように顔をもたげて今度こそ目を閉ざしてしまったクリフォードを見て、(しまった…王子って無類のファー好きだ)は溜息を吐いた。

「…てか暖をとるな、暖を」

アメリカ随一の捕球力を誇るクリフォードの手のひらが、その本領を発揮させやしないかとひやひやしながらは呟く。
王子のニックネームで親しまれながら、しかし今はお姫さまも裸足で逃げ出す程の寝顔をに披露するクリフォードはすやすやと健やかな寝息を立てていた。
ごく近いところで湯たんぽ宜しく捕獲されてしまったは為すすべもなく、その余すことなく麗しいご尊顔で大人しくするしか道はない。
疲れているのだろうか、さして寝心地が良くなさそうなソファに横たわって瞼を閉じる姿が少し気がかりだ。
撫でることが出来ないので―まあ普段も出来ないが―すり、と髪の毛を寄り添わせてみる。
ふ、と満足したように息を吐いた横顔は幼い子供のようだ(口が裂けても言わない)
ゆるゆると背中や頭を伝う手のひらが夢うつつに毛並みを撫でる。
おそらくはバッドの手間暇その他諸々のおかげで良くなった触り心地の所為だ。
身じろいだ拍子にはらりとかかる金色の細い髪にくすぐられながら、は別のことを考えようと試みる。
彼の豹柄のシャツの黒い部分を86まで数えたところで、もまたうとうとと眠りに片足を突っ込んだのだった。



10.照れくさい



++あとがき+++
王子は手触りの良い物が好きに違いない^q^
この後バッドが火サス級の悲鳴を上げること必須。
ほのほのほのぼのぐらいを目指しました。
王子のファーは正義\^o^/


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