射るような眼差し、とはよく言ったもので、東洋独特の限りなく黒に近いダークブラウンの瞳は鋭く鋭く冷ややかにその色を濃くしていった。
足は縫い止められたかのように微動だにせず、視線はある一点に定められたまま、体の前で交差するように組んだ腕はバインダーをきつく掴んでいる。
唇は真一文字に結ばれたまま、頬の筋肉は表情を忘れて沈黙を貫いた。
ぴりぴりとした緊張が場を包み込んでいく。
もう少し見ていても面白くはあるが、言語というコミュニケーションツールを持たないもの同士流石にいたたまれないので、ドンはの憂いを取りにかかった。

みぃ、もの悲しげに鳴き声をあげる野良猫の首根っこを掴んで持ち上げる。
一瞬身構えたから180度反対の方へと追い立てるように体を叩いてやると四本足で歩く猫は茂みへと姿を消した。

「もう大丈夫だろう?」
「…アイツらも何でわざわざ寄ってくるかな」
「お前の目が切れ長だからじゃないのか」
「悪かったわね目つき悪くて」

若干青い顔で溜息を吐く、心霊現象もやたら足の多い昆虫類もものともしないの、天敵とも言えるのが『猫』である。
何故だと聞かれても理由は分からないそうだが、多少なりとも似通った性質を持つ二足歩行の猫は四足歩行の猫がお気に召さないらしく、今日今先程のように遭遇した日には凄まじい顔と顔色を披露した。

「もう苦手だ嫌いだとそういう次元を超越した憎悪といっても差し支えはなさそうだ」
「私が天才だったら猫が絶対に近寄れない国を作る」
「国境を猫除けのペットボトルで囲むか?」
「マタタビが育たない土壌を作ってネズミを完璧に駆除する環境を整えるわ。手始めにバイオテクノロジーを勉強しようと思う」
「…壮大な計画と柔軟な発想は評価しよう。だがそれより次からは恥を忍んで俺を呼べ」



願望



(二足歩行の猫はそれなりに本気)


タイトル*暗くなるまで待ってさまより


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