※ 312th down「新世代へ」ネタバレ注意

人間極限状態に陥ると貧血になるらしい。
さぁ―、視界が白波か砂嵐に飲まれて足元がべこりと陥没するような、あまり愉快な心地ではなかった。
NASAエイリアンズ、いやシャトルズの面々が、パンサー!口々に彼を呼ぶのが聞こえた。
ああ、最悪、恥ずかしい。折角ドンの計らいで、会いに来たって言うのに。
銀河系グラウンドとか言う壮大に恥ずかしい名前のフィールドの片隅での思考が呑まれていくようだった。

さん!」

黒々とした真珠の粒みたいに遠かったはずのパンサーが、瞬き一つの距離でを呼ぶ。ああ、新記録出たんじゃないパンサー?一週間振りなのにごめんね。ものすごく尊敬してるアポロさんってあの人なの?
伝えたいことはたくさんあるのに、喉の奥が大渋滞だ。
うぅっすらと開いた目に郊外の日差しが眩しい。

さん、忙しいのにわざわざ」

オロオロと慌てるパンサーに支えられて、部室の扉をくぐる。
噂通り自動開閉なんだ、どうでもよいことにばかり目がいってしまう。
とすん、ゆっくりと誘導されてソファーに横たわる。際にパンサーの膝枕(ちょ、彼女か)
遠慮がちに頭を撫でる手のひらが心地よくて、はすんなりと意識を手放した。

          * * *


「あ、起きた。よかった…!」

ひょこ、相変わらず枕に徹していてくれたらしい、パンサーが真上からの顔を覗き込む。
若干涙目なのが気になります黒豹くん。手を伸ばしてぺしぺしと頭を撫でる。(ああもう本当どうしようかわいい)

「ごめん、来て早々心配かけたね」
「ううん、会いに来てくれて嬉しいです」

笑顔が眩いです。

さん、起きれる?ホーマー以外初めてだからさ、みんな会いたがってて」
「そうね、特にワットくんには正しい日本文化をみっちり叩き込んであげないと」

ぐぅ、と伸びをして肘を付く。(あれ、うそ)つもりが、また傾ぐ。
さんっ、息を呑んだパンサーの敏捷さにまた助けられた。
つくづくなよい―…クリフォードの呆れが目に浮かぶ。
ぽた、汗が伝う。

さん…」

パンサーの指が眦を掠めた。
相変わらず温かい手指が頬を撫でる。

ちゅ、―ぎゅう

「な、なおっ た…?」

額に、パンサーのヘアバンドが当たる。
かぁ、耳から頬へとライン状に血が上る。しかし頭は存外と冷静に働いた。パンサー、誰の入れ知恵かしら?
できうる限りの平静を装ったの問い掛けに、パンサーは素直にこう答えた。

「あ、あの、みんなが…こうすると良くなるって」
「そう……(あんのエロハゲ…!)」

は生まれて初めて、見ず知らずの人を本気で罵った。



憎しみよりの



タイトル*ララドールさまより


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