※ 312th down「新世代へ」ネタバレ注意

「   」

ささやかな風のようであった。
さわ、草木をほんの少し撫でるような、柔らかで、ほんの少しあたたかく、優しく、瞬きの間にの心を吹き抜ける、風。
ともすれば見逃してしまいそうな、その小さな、控えめで静かな吐息が、がつん、を、の頭と心を激しく揺さぶった。
頬が、指先が、左胸のあたりが、切なくあつい。
バインダーを持つ手を強く握りしめて、は平静を装った。(上手く出来ているかどうかは別として)

「タ タ、ンカ…?」
「?どうした、
「そ、そう、それそれ!」
「……?」
「え、あ、いや…ごめん、なんでも、ない」

高い位置にある首をひょこ、と傾けて、タタンカはその頭上付近にクエスチョンマークを浮かべる。
小首を傾げてしまった彼に弁解するように頭を左右に振るって、は、なんでもない、ともう一度呟いた。

「何でもないならいいけど、疲れてるなら無理しない方がいい。は時々頑張りすぎる」
「そのお言葉はタタンカにそっくりそのまま熨斗を付けてご進呈」
「そうやってまた、誤魔化すだろう」

少しだけ渋い顔をして、タタンカはタオルをカゴに押し込んだ。
グローブを直す。その挙動を横目で見やりながら、は未だ忙しなく暴れる心臓を宥めた。
ふー、と深呼吸。



ようやく落ち着き始めたはずの動悸が津波のようにをさらう。
さわ、今度は本当に風が吹いての髪を靡かせた。
頬にかかる一筋の髪を払って、大きな掌が頭を撫でる。

「なにかあったら、すぐに呼んでくれ」

そう言うと、タタンカ!彼はチームメイトに呼ばれるままにフィールドに戻っていく。
振り返らなかったのは幸か不幸か。
入れ違いに戻ってきたバッドの足元に、は心行くまでしゃがみこんでうなだれた。
誘われるようにバッドも足を付く。

「オーイ、?どうしたよ」
「むり、もうむり。絶対あの人無意識にタラシだ。ありえない、ありえないありえないほんとない。普段はあんなにハニカミの貴公子のくせに」
「……タタンカ?」

うわ言のように繰り返される呟きに、バッドは何となくその意図するところを悟った。
キスは論外ハグもおろか、手を繋ぐことすら清水ダイビングの奥手カップルに何かあったに違いない。
バッドの口からタタンカの名前が出た時点で、の顔が火を噴かなかったのは奇跡だと後に彼は語る。そのぐらい顔を真っ赤にして、は小さく呻いた。

「ひ、ひとの気も知らないであんなの犯罪だ…」
「よしよし、イイ子イイ子」

宥めるように肩を叩いて、バッドは親愛の溜息を吐く。
緑のフィールドを駆けるタタンカを見やりながら、20分掛けてようやく、の戸惑いの理由をバッドは聞き出したのだった。

名前を呼ばれて、頭を、撫でられた。



それだけ



(先は長いなあ…がんばれ、


++あとがき+++
ツンデレがデフォルトな筈なのにいつものワイフじゃなi(爆)
普段は名字呼びなのに急に名前呼びされてデレ全開なワイフでした。
タタンカと恋人の時は急に奥手になる不思議←…
ペンタグラムのハニカミ貴公子(予想)は天然タラシを希望します。
決勝戦前の扉絵とストレッチをしているオーバー200センチミーターの彼に心奪われました。
でらべっぴん。彼の美しさは神秘だと思います(真面目に)
ドキドキさせちゃえばいいんだから!と意気込んで執筆。
これでまたドナルドさんの時のようにキャラが違ったら多分きっともう泣くしかないOTL
パンサー然り、年下彼氏は楽しいことが判明。
バッドは絶対恋愛相談室的ポジションですよねうふふ←…

 タイトル*暗くなるまで待ってさまより


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