カラン、カラン
グラスに入れた氷をかき混ぜたときよりもう少し薄く心許ない、涼しい耳鳴りに耳を澄ませて息をつく。
シェル素材の風鈴はガラスのものより脆い、澄んだ響きを奏でて揺れた。
微々たる風が風鈴の音で初めて形を見せる。
爽やかに肌を撫でられて、はたとタタンカは目を覚ました。
視界いっぱいにつややかな黒が広がる。
抱き込むように腕を回して、無意識のうちに鎖骨のあたりに引き寄せていたの横顔にさらりと長い前髪が落ちた。
タタンカに合わせて特注サイズのベッドの上に二人分の黒髪が流れる。
人前では滅多と結いひもを解らないのだが、その“人前”の対象からが外れたのはいつ頃だっただろうか。
重なり合うように混ざったタタンカの髪との髪を一緒くたにしてすくい上げるのは、いつからかとても気分の良いことになった。
「んんん…」
「?」
「…よくねた」
「おはよウ」
もぞ、最小の範囲内でが身じろぐ。
シーツの上で髪の毛がさらさらと涼しい音を立てた。
髪を辿るのをやめないまま、タタンカは目を細める。
半分身を乗り上げるような形でタタンカにもたれていたはゆっくりと上半身を起こして枕元に座り直した。
寝そべったタタンカをのぞき込むような配置は、身長差を一時でも克服するための習慣である。
この時ばかりはタタンカもを見上げた。
ぐぅ、と伸びをしてもまだタタンカにはちっとも足りない体が揺れる。
ふとが頭を振るうと釣られるように髪が引っ張られた。
「ン?」
「あ」
糸が繋がるように、一握りの髪がとタタンカを結ぶ。
中途半端な位置で揺れるそれを見やって、しばしの沈黙。
「ぷっ…くく!」
「リアルわんわん物語ダ」
仰向けのタタンカを横断するように、がうつ伏せに寝転がって絵声をこぼした。
まとまった毛束を手に取りながらタタンカも静かにほほえむ。
毛先を結ばったままにして、しばらくの間二人はそれをほどこうとはしなかった。
ほどけない ほどかないで
(あともうすこしそのままでいよう)
++あとがき+++
タタンカの後ろ髪発覚記念(笑)
髪の毛ネタは色々やりたいなー!
ちなみに、わんわん物語はかの有名なねずみさんのアニメでわんこ二匹が同じ皿からスパゲティ食べてたら一本繋がっててキャハッてやつです(…)
タイトル*流星雨さまより
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