【OH MY LITTLE....】−3−


 「あの、兄さん・・・」
 「リナリー、どうかしたかい?」
 
  かれこれ三十分ほど二人が睨み合いを続けていると、リナリーがやってきた。
 
 「それがとフィルが談話室で寝ちゃって・・・それで元帥を呼びにきたんだけど・・・・お取り込み中みたいね
 「あらら、そうなの?ちょっと待ってて クロス〜?」
 「なんだ」
 「神田くんと口喧嘩するのも構わないけど〜、その辺で止めとかないと〜・・・・
  大事な大事なちゃんの寝顔がぁ本部の野郎共に見られ放題に
 「ぁあ゛?」
 「ちょっっ、もう兄さん!!なんでそんな人聞きの悪いふうに言うの!?」
 「だって事実じゃない。ちゃんとリナリーぐらいの美人はなかなかお目にかかれないんだよ〜?すんっごい人気なんだから」
  
 (((さりげにノロケやがった・・・)))
 
 「というワケで、心配ならさっさと行って来なよ、クロス」
 「チッ おい、神田ユウ」
 「気安く呼ぶな」
 
  神田が突っぱねる様にそう言えば、クロスからは今までとはまったく違う調子の声が返ってきた。

 
 「今度になんかしてみろ・・・・お前、殺すからな
 

  ビリリ、と 
  空気が震えるほどの威圧と、のしかかるようなプレッシャー。
  背筋に厭な感覚が走る。
   ―神田に、元帥との格の違いを身を以て感じさせるには十分なまでの。
 
 
 (ギャー!師匠本気の目ぇしてるーー!!)
 (マジこっえーー!!)

 
  ↑
  アレン・ラビ、声にならない叫び(笑)
 
 「二度とするか」
 
  そんな二人を余所に神田はそう言ってのける。
 
 「ならいい」
 
  クロスもそれ以上は言及せずに部屋を出ていった。


          * * *


 「ぉぁ・・・マジで寝てやがる」
 
  クロスが談話室へ行くと、フィルを抱いたままソファで眠るの姿。
  普段は優秀なエクソシストだが、如何せん危機感の抜ける所がある。

 (昔に比べりゃまだマシか・・・・)
  
  かつてのは人前では決して隙を見せない子供だった。
  常に神経を尖らせて、常に一人で生きていこうとして。
  痛々しい程に前を向いて。
 
 (・・デカくなったな)
  
  二人を起こさないように細心の注意を払いながら器用にフィルごとを抱き上げる。
  
  子供一人分を足しても大した重みにはならないほどに線の細い体躯。
  それでも、はここまで歩いてきた。
  
  強く
   
  美しく、
  
  しなやかに成長して。


  クロスが静かに厳かに、の額に口付けを落とす。
  
 「・・・どこの誰であろうと、を譲ってなんざやるもんか。こいつを手放すなんて冗談じゃねえ」

  先程の威圧からは考えられない程に優しく、愛おし気にクロスがそう呟く。
  そして、ふと思い出した。かつてのの言葉。


 
 ―貴方の心は誰にも譲ってあげません。
   私だけの物です
 
 

  「その通りだ。


 『愛してる』


  相思相愛であるならば、こんな束縛も悪くない。







   
   蛇足ながら
   しばらくの間教団ではクロスとの隠し子説が飛びかった。
   
    コムイ「そりゃそうだよねぇ。あんだけ目立つし、絵になるもん」
  リーバー「なんであんたそんなに楽しそうなんだ・・・」
    コムイ「実は写真もあるんだよ。ホラ」
  リーバー「いつ撮ったんですかコレ!?しかも、よりによって
        キスシーン・・(注】本文中にあるやつです)」
    コムイ「あっV教団内で瓦版にでもして発行しちゃおっか!?」
  リーバー「ギャー!元帥に見つかったら殺される!!」



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